日本の所得収支の動向と展望 ~貿易黒字が縮小する中で、所得収支黒字は頼りになるのか
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2011/08/01


○現在、日本の経常黒字は中国に次ぐ世界第2位の規模であるが、その大部分を所得収支が稼ぎ出している。かつては、貿易黒字が最大の稼ぎ手であったが、2005年以降、地位が逆転した。


○日本の所得収支の内訳をみると、証券投資収益が最も多く、直接投資収益がそれに次いでいる。この二つの項目で所得収支の大半を占めている。


○2010年の日本の所得収支は、ドルベースで見ると1,333億ドルであり、所得収支の黒字額は米国に次いで世界第2位である。しかしながら、日本の所得収支が大きいのは、受け取りが大きいからではなく、支払いが小さい結果、ネットで大きくなっているにすぎない。対外資産・負債の残高を比べてみても、日本は他の先進国に比べてネットの純資産は大きいものの、グロスでは相対的に低い水準に留まっている。


○対外負債の規模が小さく、海外への資金の支払いが少ないということは、ネットの数字である所得黒字を大きくするが、そのことは必ずしもプラスに評価できるわけではない。対外負債が小さいということは、海外から日本への投資が少ないということで、その分、日本国内での需要拡大や、雇用拡大につながっていないと言えるからだ。


○所得収支の伸びと家計の財産所得の伸びを比較すると、前者に比べ後者は小さいものに留まっている。海外からの所得の(純)受け取りが、十分には家計に還元されていないことが示唆される。


○日本の経常収支の構造は中長期的には、貿易黒字が徐々に縮小していく中で、所得収支が拡大し、その比重も拡大していくものと予想される。これまで、貿易黒字の取り分は、輸出品生産にかかる労働の対価として家計に回る部分も相応にあったと考えられる。しかし、所得収支の多くは家計ではなく、金融機関、企業の取り分になるとすると、貿易黒字の縮小、所得収支の拡大が進む中で、家計にとっては所得分配が不利な形に変化していく可能性がある。


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