東日本大震災が雇用に及ぼす影響 ~阪神・淡路大震災から得た教訓を基に~
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2011/09/26


○東日本大震災の発生によって、持ち直しの動きが続いていた国内景気は急激に悪化した。一方、雇用情勢については、全国的にみると緩やかながらも改善しているという傾向は震災前から基本的に変わっていない。人的、物的被害の大きさと比べると、震災による雇用環境への悪影響は、少なくとも被災地以外においては心配されていたよりは軽微なものにとどまったとみられる。


○東日本大震災が雇用に与える影響を検討するにあたっては、同じ大規模災害である阪神・淡路大震災後の雇用情勢の分析が参考になる。阪神・淡路大震災当時と同様に、短期的な失業率や求人倍率の動きには表れない形で、東日本大震災による雇用環境の悪化が進んでいる可能性が高い。


○阪神・淡路大震災の後、被災地の神戸市では雇用者数が減り、自営業主はとくに大きく減少した。また、雇用の非正規化が加速するなど雇用形態も変化した。サービス産業の発展や圏外への移動によって失われた雇用の一部が賄われたものの、十分な受け皿とはなり得なかった。


○東日本大震災の被災地の復興にあたっては、第1次産業をどのような形で再生させていくかが大きな課題であるが、効率性だけを重視した産業政策を進めるのではなく、高齢者雇用についても考えなければならないという難点がある。また、復興が遅れれば自営業主の減少を加速させてしまうことに繋がる。さらに、震災前には全国と比べて低かった非正規雇用の割合が、震災を機に一気に高まる可能性がある。


 


○阪神・淡路大震災では、雇用のミスマッチを内在したまま復興が進められたことで、長期的な雇用情勢の低迷を招く結果となった。東日本大震災の被災地では人口減少と高齢化が進んでいることなどから判断すると、事態はより深刻化する懸念がある。これ以上の人口流出を加速させないためにも、被災地では地元での雇用を確保することが非常に重要である。今後は、短期的な復旧対応から中長期的な復興対策を行っていく必要がある。被災地が抱える根本的な問題点を踏まえて適切な対策を進めなければ、阪神・淡路大震災時の二の舞となってしまう。

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