消費税率引き上げは後追いの負担増 ~負担増の先送りは世代を超えた不公平を生み出すことに~
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2012/08/03


○今回、消費税率が引き上げられる見通しとなった背景には、家計部門の受益と負担のアンバランス拡大がある。家計部門の労働所得に対するその他の支払・受取額の割合をみると、社会保障負担や経常税支払の割合は全体としてはほとんど変化がない一方、年金や医療費などの社会保障給付の割合ははっきりとした上昇基調にある。高齢化がさらに進展することは確実であり、このままでは受益と負担のアンバランスはさらに拡大する。消費税率引き上げによって社会保障基金や政府の財政を安定化させる必要がある。


○89年の消費税導入の目的は、財政赤字の削減よりも、累進構造の簡素化などによる所得税減税と、消費税の導入をセットにした直間比率の見直しといった税体系の改革にあり、結果として消費税導入時の家計の負担はあまり大きくなかった。物品税などの廃止で導入前後の駆け込み需要と反動減が小さかったことなどもあり、消費税導入が景気へ与えた影響は限定的だった。


○97年の消費税率引き上げは、家計に負担を求めることで、高齢化のさらなる進展などで深刻化した財政赤字を削減することを目的としていた。そのため、家計の負担増が消費支出の水準を一定の規模で低下させて景気を下押しする要因となったが、さらに駆け込み需要と反動減への対応がうまく行かなかったことが生産調整圧力を高め、景気悪化のきっかけになったと考えられる。


○今回の消費税率引き上げの目的は、財政赤字の削減、特に高齢化の進展で大きく拡大した家計の受益と負担のアンバランスを是正することにある。家計の負担増を伴うものであり、消費税率引き上げが一定の規模で景気を下押しする圧力となるのは避けられない。ただ、駆け込み需要と反動減への対応力は向上していると見込まれ、前回の引き上げ時のように景気悪化のきっかけとなる可能性は小さいと考えられる。


○消費税率引き上げに際し、家計の負担軽減などのために政府の支出増を求める声があるが、税率引き上げによる増収分が新たな支出に使われるのであれば、財政赤字の縮小には寄与せず、社会保障制度維持の可能性も高まらない。本格的な高齢化社会を安定的に営んでいくためには、消費税率の引き上げというコストを私たちは負担しなければならないであろう。


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