安定した個人消費の背後に潜む不安定要因
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2012/11/07
調査部 尾畠 未輝


○1990年代以降、日本経済の低迷が続く中でも、個人消費は底堅さを維持してきた。雇用者数と一人あたり賃金がともに伸び悩んだことを受けて、個人消費の源泉である雇用者報酬が冴えない動きとなっても、個人消費は安定して推移している。


○こうした個人消費の底堅さを下支えしているのは、増加する社会給付を受けて安定した可処分所得である。近年では、雇用者報酬が減少基調にある中で、社会給付がその減少分を補う形で増加することで、可処分所得は安定が保たれている。個人消費は雇用者報酬と社会給付の合計に対してほぼ一定の割合が保たれており、1990年代後半以降、個人消費は雇用者報酬を大きく上回った水準での推移が定着した。


○個人消費の中でもサービス消費の堅調さが目立っている。1980年代以降、経済のサービス化が進行し個人消費におけるサービス消費のウエイトは拡大が進んだ。所得弾力性が低いサービス消費のウエイトが増すことは、個人消費をさらに安定させることに繋がる。今後も高齢化の進行に伴って医療や介護関連のサービス支出が増えることで、サービス支出全体を押上げ、個人消費を下支えする傾向は続くとみられる。


○近年では可処分所得のうち社会給付によって支えられている部分は大きくなってきており、安定した個人消費は非常に不安定な支えによって実現しているといえる。今後も、雇用者報酬の減少が続いても社会給付が増加するのであれば、個人消費は2016年度に282.4兆円まで増加した後、減少基調に転じるものの、2025年度でも足元とほぼ同じ水準を維持するとみられる。


○しかし、わが国の財政状況がさらに厳しさを増す中、今後も社会給付の増加が続くがどうかについての懸念は大きい。財政健全化を目指して社会給付の抑制が進めば、個人消費の減少幅は徐々に拡大してくる。2013年度以降、一人あたり年金支給金額が年1%、年金以外の社会給付が年290億円、というペースで減少すると仮定すると、2025年度の個人消費は263.3兆円と、2011年度の実績値を14.3兆円下回る水準にまで減少すると試算できる。


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