「財政の崖」と米国経済に与える影響~ヤマ場は来年の春~
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2012/11/09
調査部 細尾 忠生


○米国では、2013年年明けから、大増税と歳出の大幅削減が始まる「財政の崖」が懸念され、大統領選挙で再選を果たしたオバマ大統領が最初に直面する大きな政治的課題となっている。短期的なシナリオとしては、景気への影響を避けるため、議会は11月13日からクリスマス休暇前にかけ開催されるレイム・ダック・セッションで、問題の先送りをはかる可能性が高い。


○もっとも、先送りをしても来年春にはあらためて財政論議はヤマ場を迎える。まず、2013年度(2012年10月~2013年9月)予算は、民主、共和両党の対立により来年3月までの暫定予算が成立したにすぎず、それまでに本予算を成立させる必要がある。また、同じく来年3月頃までに国債発行のための政府債務の法定上限を引き上げる必要にも迫られる。債務上限の引き上げに際しては、共和党が追加の財政再建措置を求めており協議の難航が予想される。さらに、格付け会社ムーディーズは今年9月に、財政審議を通じ財政再建策を示せなければ、米国債を格下げすると警告した。予算審議や債務上限引き上げをめぐり財政協議がヤマ場を迎える来年3月頃には、米国債の格付け判断が示されるため、そこが財政再建策を取りまとめるタイム・リミットとなりそうだ。


○米国では、国防費に加えて、低所得者向け公的支援が増加し、財政赤字は4年連続で1兆ドルを上回った。このため、エンタイトルメント予算へのキャップ制導入などの効果的な手法に関して、民主、共和両党が合意できるかどうかが、米国の財政再建をめぐる論点である。


○来春にヤマ場を迎える財政協議では、財政赤字に対する世論やビジネス界の関心の高さを背景に、民主、共和両党が何らかの財政再建策で合意することがメイン・シナリオとなる。「財政の崖」が現実のものとなり、米国経済が混乱に陥る可能性は小さい。もっとも、党派対立の根深さや、緊縮財政による景気への影響を考慮すれば、財政再建への取り組みが先送りされる可能性も残る。財政再建が開始される場合には、「財政の崖」ほどではないにせよ公式試算の半分程度の「崖」が残るとみられ、2013年の景気の下押し要因となることにも注意が必要であろう。


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