リーマンショック以降の米国の設備投資~財政・金融問題の軟着陸が先行きの増勢のカギに~
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2013/08/30
調査部 土田 陽介


○米国では景気の新たな推進力として設備投資に注目が集まっている。設備投資がフォーカスされている理由の1つに、新興国において事業を行うことに対する「総コスト」の高まりがある。もう1つは「シェール革命」の存在である。国際原油価格が高水準で推移する中で、頁岩(シェール)層から安価な天然ガスやオイルを生産する技術が米国で発展している。シェールガスやオイルの増産が進めば、将来的にはエネルギーコストの低下という福音が経済全体にもたらされ、石油化学のみならず製造業一般の設備投資の増勢までも促されるだろうと期待されているのである。


○こうしたシナリオが現実のものとなれば、米国経済の成長力は大きく高まるだろう。事実ミクロベースでは、石油化学産業などを中心に製造業の国内回帰の動きが散見される。もっとも、足元の米企業の設備投資はマクロベースでみるとまだ循環的な回復局面にとどまっており、力強さを欠いている。企業収益との関係からみても、米企業のキャッシュフローがリストラの進展などを受けて順調に増加してきた一方で、これまでの設備投資の増勢は弱めである。また先行きを展望しても、米政府が抱える膨大な債務の返済(財政問題)と米連銀(FRB)による金融政策の正常化(金融問題)という、企業の期待成長率を押し下げるような難題が待ち構えている。


○世界経済の成長が未だ力強さを欠く中で、米国経済には牽引役としての役割が期待されており、その意味で同国の設備投資が順調に拡大していくことは、世界経済にとっても非常にポジティブなことである。足元の設備投資の増勢は必ずしも強いとは言えない中で、先行きを展望しても、最大の不確実性である財政・金融問題が軟着陸できなければ、楽観論者が描くように設備投資が米国景気を牽引していく姿が実現することは困難であるといわざるをえないだろう。言い換えれば、そうした不確実性が改善されていけば、米企業の設備投資意欲は確実に高まり、経済成長を牽引していくことになると期待されるのである。


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