長時間労働と残業代の実態~新たな労働時間制度の導入~
全文紹介

2014/06/26
調査部 尾畠 未輝


○わが国の就業者一人あたり労働時間は、先進国の中で長い。6月24日に閣議決定された『「日本再興戦略」改訂2014』では、時間ではなく成果で評価する「新たな労働時間制度」、いわゆる「残業代ゼロ制度」の創設が明記された。人口減少社会では労働生産性の向上と長時間労働の抑制がより重要になっている。


○固定費としての性質が強い所定内給与は横ばいでの推移が続いている一方、所定外給与や特別給与は振れが大きく、変動費のような特徴を持つ。所定内給与が伸び悩む中、本来は企業業績に見合って支払われるはずの特別給与は経常利益が増加している間も減少傾向が続き、結果的に所定外給与が景気の変動を直接的に反映してきた。労働者にとって、残業代は賃金を下支えする大切な存在である。


○労働時間の長さと生産性には負の相関がみられるが、生産性が低い産業ではその分多くの労働時間を投入することで補っている可能性がある。また、長時間労働が目立つのは若年層や高所得層である。


○このまま大きな変更がなく議論が進めば、新たな労働時間制度の対象は非常に限定されることになり、マクロでみた労働市場へ直接的に及ぼす影響はほとんどないとみられる。今後、対象者が広がっていく可能性があるが、実態にそぐわないものであれば制度の対象が広がっても浸透や定着はしないだろう。実際、既に導入されている「みなし労働時間制」や「業績評価制度」は、運用面の難しさもあって、なかなか活用できていない。


○サービス残業の増加などデメリットに対する懸念もあるが、それらは制度だけではなく運用の問題でもある。制度の導入と並行して適切なマネジメントや評価を行える人を養成していくことも重要となってくる。成果を評価してそれに報いるシステムと合わせて制度を正しく運用すれば、労働者の効率的な労働に対するインセンティブを高めるとともに、不公平感の解消に繋がることも期待できる。


○最も問題なのは、企業が新たな労働時間制度を単に人件費を抑制する方法として利用してしまうことである。効率的な労働が実現した場合、その分、成果を上げている労働者に対しては、きちんと賃金を還元する必要がある。


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