低インフレ問題からみたユーロ圏経済~改めて浮き彫りになった成長の「非対称性」~
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2014/07/31
調査部 土田 陽介


○ユーロ圏の低インフレ問題は、ユーロ圏経済が抱え続ける成長の「非対称性」を反映した現象である。本レポートは、主要4ヶ国(ドイツ、フランス、イタリア、スペイン)の低インフレ問題を比較・分析することで、その構造的特徴を確認する。


○低インフレは景気の低迷を反映した現象であるが、それがデフレに悪化し、経済活動に制約を科して景気を一段と停滞させることを政策当局は警戒している。日本の経験に基づけば、経済活動への制約は主に4つのチャネル(【1】ゼロ金利制約と実質金利の高止まり、【2】為替高と輸出型産業の外国移転、【3】賃金の低迷と消費の停滞、【4】債務調整に対する向い風)を中心に顕在化する。


○以上で述べた4つの点に即して主要4ヶ国の低インフレ問題を比較すると、【1】については、ドイツを除く3ヶ国で生じつつある。【2】については、為替レート上昇の影響がフランスとイタリアで顕著であるものの、生産拠点の移転は進んでいない。【3】については、スペインでは緩和しつつある一方、フランスとイタリアでは悪化が続く。【4】についてもフランスとイタリアが懸念される。総じて評価すると、ドイツを除く3ヶ国では低インフレ環境が経済活動の制約条件になりつつあるが、ドイツはむしろ物価の安定を享受しているといえる。


○ドイツ以外の主要国や南欧諸国が構造調整圧力を抱えるなかで、欧州経済は低成長・低インフレが続く公算が大きい。そのため、欧州中央銀行(ECB)は低金利政策の長期化を余儀なくされよう。他方で、債務調整圧力が弱く物価上昇も安定しているドイツが、マイナスの実質金利を追い風に景気の拡大を続ける見通しである。同時にドイツでは、緩和的な金融政策を受けて資産バブルが発生し、それが破裂するリスクが高まると考えられる。


○こうしてみると、リーマン・ショックはユーロ圏経済の成長とリスクの担い手をドイツにスイッチさせるきっかけとなり、欧州債務問題はその定着に作用したと考えられる。ユーロ圏の低インフレ問題は、その時々において実質マイナス金利を享受できて全体の経済成長をけん引する国とそうでない国とが併存するというユーロ圏経済の「非対称性」を改めて浮き彫りにした現象といえよう。


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