国債の市場流動性低下がもたらす金利急騰リスク ~慎重さが求められる金融政策、国債の安定性を削ぐ金融規制は見直しを~
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2016/08/19
調査部 廉 了


○リーマンショック以降、世界中の国債の市場流動性低下が著しい。国債の市場流動性を計る指標として使われる回転率(=売買高/発行残高)を日本・米国・英国について見ると、特に米国はリーマンショックの時期に急低下し、その後も徐々に下落している。日本・英国についても米国ほどではないものの低下傾向が続いている。


○最近でも国債の市場流動性低下が要因と思われる長期金利が乱高下した事例があり、代表例が①バーナンキ・ショック、②債券版フラッシュ・クラッシュ、③足元の日銀金融政策決定会合後の長期金利急騰、である。


○国債の市場流動性低下の原因の一つとしては、量的緩和政策の導入により、各国中銀が市中から国債を買い取ったため、各国国債市場における中央銀行のプレゼンスが急速に拡大し、市中に出回る国債の流通量が減少したことが考えられる。つまり、中央銀行が量的緩和政策をとり続ける限り、市中の国債の流動性回復は見込みにくいと思われる。


○二つには、イールドカーブの極端なフラット化がある。特にマイナス金利を導入している欧州や日本の場合、イールドカーブの極端なフラット化が進み、2016年7月末においては、日本・ドイツ・スイスの10年国債の利回りもマイナスとなっている。また、米国の金利についても、2014年以降、利上げがあったにも関わらず、10年国債利回りは低下し続けている。各国の長期金利がここまで極端に低下すると、機関投資家にとって、長期国債は投資魅力に欠けることになり、これが売買高の伸び悩みに直結していると考えられる。


○三つには、金融規制の影響がある。特に影響が大きいのがバーゼルⅢとボルカールールである。この規制に共通する目的は、銀行に過度のリスクをとらせないことで、リーマンショック前、特に欧米銀行が、規制の抜け穴や規制が十分機能していない領域で過度のリスクをとったことが金融危機発生の大きな原因となったことがわかっており、バーゼルⅢやボルカールールは、そうした行為を阻止することを目的に導入された。しかし、実際はやや行き過ぎている部分があり、銀行を過度に委縮させ市場流動性低下に繋がっていると思われる。


○当局も、国債市場の流動性低下について、原因を特定すべく、調査分析しているが、原因を特定するには至っていない。


○2016年以降、米国の利上げペースが当初想定されていたペースより鈍化しているため、危機感はやや低下している。しかし、国債の市場流動性は回復していない。市場流動性の低下の原因は特定されてはいないが、中央銀行の量的緩和政策や規制は間違いなく影響しているであろう。


○中央銀行は、金融政策を行う際、国債の市場流動性により配慮したオペレーションをする必要があろう。


○また、国債が金融取引の担保や特に金融規制上の安全資産として機能するのは、十分な市場流動性が確保され、金利は乱高下しないことが前提となっている。しかし、その規制が、国債の安全資産としての安定性を損なう面があることは問題であろう。金融行政や金融政策の実行性・有効性を維持する観点で制度設計し、国債の安定性を削ぐようならば金融規制は見直すことも必要であろう。


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