利用状況から見えてくるEPAにおける今後の課題~TPP頓挫後の日本のEPA戦略~
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2016/11/29
調査部 中田 一良


○日本は、2016年6月に発効したモンゴルとのEPAに至るまで、15のEPAを締結している。しかしながら、日本との貿易規模がそれほど大きくない締結相手国が多いこともあり、日本のFTAカバー率(FTA/EPA締結相手国との貿易額が貿易総額に占める割合)は20%台前半であり、米国、韓国、中国と比較すると低い。


○日本が締結したEPAにおける自由化率(関税を撤廃する品目割合)は、米国や韓国が締結したFTAと比較すると低い。これは、締結したEPAにおいて農林水産品を中心に関税を撤廃していない品目があるためである。もっとも、そうした品目を除けば、締結したEPAの下で、関税の引き下げは進んでいる。


○日本が締結したEPAがどの程度活用されているかをみると、輸入面での利用割合は、米国と比較すると低く、引き上げ余地はあるものの、他の先進国と比較しても遜色ない水準といえる。品目別では、後発開発途上国向けの特別特恵関税制度が利用されて輸入されている衣類や皮革製品、関税率が低い重油などでは利用割合が低いものの、農林水産品や食料品などでは利用割合が高く、EPAによる関税引き下げのメリットが活用されていると考えられる。


○輸出面では、タイ、インドネシア、インド向けでEPAが積極的に活用されており、日本の締結相手国先においても関税の引き下げは進んでいる。しかしながら、世界ではFTA/EPAが積極的に締結されており、関税面で日本だけが有利な立場にいるわけではない。EPAを締結することにより、海外需要を取り込んで輸出を伸ばすためには、締結相手国における自由化率だけでなく、関税の削減・撤廃ペースも重要になると考えられる。


○EPAの利用割合を企業規模別にみると、中小企業で低く、その理由の一つとして、EPAの制度や手続きを知らないといったことがあげられている。また、EPAを利用して輸出を行う上の問題点として、原産地証明等に関する事務的負担が指摘されている。企業の利用割合を引き上げるためには、中小企業を中心にEPAに関する情報提供を強化していくことが必要と考えられる。また、EPAはその性格上、原産地証明等に関する事務手続きは避けられないが、企業の負担が小さくなるような工夫も必要だろう。


○これまでに締結されたEPAは、輸入面では利用されているということができ、日本のFTAカバー率が高まれば、それに伴ってEPAの輸入面での効果が期待できる。もっとも、日本のFTAカバー率の上昇に寄与すると期待されていたTPPについては、米国ではTPPに反対姿勢を表明しているトランプ大統領が誕生することになり、発効が困難な状況である。TPPが発効しない場合、TPPに参加しているカナダ、ニュージーランドとは、TPPの合意内容をベースに、二国間交渉を進めることが選択肢の一つとなろう。


○現在交渉を行っているRCEP(東アジア地域包括的経済連携)は、貿易の自由化の水準が低いものにとどまると見込まれているが、それでは企業に利用されない可能性がある。RCEPが、企業に幅広く利用されるためには、高い水準の貿易自由化を実現するとともに、広域をカバーするEPAの特徴を活かして、原産地規則をはじめ、企業にとって使い勝手がよいものとなることを目指して、日本がリーダーシップを発揮することが求められる。


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