配偶者控除見直しの効果と影響~負担のバランスが変わるも就業調整を減らす効果は限定的~
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2017/01/19
調査部 土志田 るり子


○2016年12月22日に税制改正大綱が閣議決定され、2018年分から適用される配偶者控除の具体的な内容が明らかになった。安倍首相は、女性が就業調整することを意識せずに働けるようにするなど、多様な働き方に中立な個人所得課税の仕組みづくりを目標に掲げており、今回の税制改正はその意向を受けたものである。


○しかし、今回の税制改正の効果は、パート労働者の就業調整をわずかに減らすのみにとどまるとみられる。


○理由の1つが、配偶者控除の制度設計にある。配偶者の年収103万円を境に世帯の手取り額が急減しないよう、現行制度では配偶者特別控除が設けられ、控除額が段階的に減少するようになっている。すなわち「103万円の壁」は税制上すでに取り払われている。新制度でもこの仕組みが取り入れられるため、税制改正が直接的に就業調整を減らす効果は極めて小さいと考えられる。


○波及的な効果として考えられるのは、企業の配偶者手当を意識した就業調整の減少である。企業の配偶者手当は、配偶者の年収要件を103万円以下に設定しているケースが多いため、経団連もこれを見直すよう呼びかけている。さらに、税制に関する議論が取り上げられることで誤解が解け、就業調整が減るという効果もわずかながら期待される。


○もっとも、103万円を意識した就業調整がなくなっても、社会保険料の負担が始まる「130万円の壁」が意識され、就業調整そのものはなくならないとみられる。また、一部の人には2016年10月1日から「106万円の壁」ができ、こちらも就業調整の要因となる。どちらも新しい配偶者控除の適用上限である150万円より低い年収であることから、パート労働者が103万円を意識しなくなったとしても、年収を大幅に増やすケースは少ないと考えられる。


○首相の掲げる「多様な働き方に中立な税制」の実現に向け、来年度も配偶者控除に関する議論は続くとみられる。今回実現しなかった夫婦控除についても、来年度以降、改めて議論される可能性がある。


○今回の改正では、納税者の所得が高い世帯を中心に、負担が増すこととなる。日本の財政赤字は膨らんでおり、それまでの税収を確保できなくなるような改革は実行するのが難しい状況になっている。今後も改革のたびに誰かの負担が増える状況は避けられず、国民の理解の得られる結果が出せるものでなければ、完遂するのは難しいだろう。


○税制の改正によって就業調整を減らすことは重要であるが、介護や育児などの就労時間を制限する要因を減らしたり、どのような働き方を選んでも不利になることがないよう、税制だけでなく、他の制度や社会環境の整備にも力を入れる必要があるだろう。


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