ドイツ経済の過剰貯蓄問題~内需拡大よりも好ましい資本輸出~
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2017/08/23
調査部 土田 陽介


○ドイツ経済の貯蓄投資(IS)バランスを見ると、その貯蓄超過幅は年々拡大している。


○過剰貯蓄問題の背景には投資、特に企業による設備投資の不足がある。企業の設備投資意欲が中々高まらない最大の要因は、製造業を中心に国外展開が進んだことにあると考えられる。EU拡大に伴い、ドイツ企業は、成長市場の獲得と生産拠点の構築を目的に南欧や中東欧に積極的に進出したという経緯がある。さらに中国やインドなど有力新興国にも進出し、いわゆる「地産地消」の観点から生産拠点を拡大していった。


○ドイツの過剰貯蓄は国外に輸出されており、足元の規模は金融危機前に比べれば少ないものの、徐々に復調している。また過剰貯蓄の大半は、一貫して欧州向けに輸出されている。欧州ではドイツから南欧や中東欧に資本が輸出されて、その経済成長に貢献するとともに、そのリターンをドイツが得るという資金循環構造が成立しており、資本自由化の成功例として高く評価されたこともある。


○国内の投資拡大は、そのタイミングによって影響が異なってくる。与党CDU/CSUは9月の総選挙で勝利が予想されており、公約通りの経済対策が実施される公算が大きい。そのため、ドイツのISバランスの貯蓄超過幅は相応に縮小するだろう。ここで問題となるのが、景気が加速を通り越して過熱するリスクが高まるということである。ドイツ景気が過熱しその後の調整が深刻化すれば、欧州景気に強い悪影響が及ぶことになる。


○ドイツ企業のサプライチェーンが南欧や中東欧を中心にグローバルに展開している中で、投資はドイツ国内だけの要因だけでは決定されない。したがって、ドイツ国内で投資の増加を促そうとしても自ずと限界がある。経済対策で国内の内需拡大を目指すよりも、南欧や中東欧の内需拡大を容認し、ドイツ企業による投資を促した方が、欧州経済全体の成長にも貢献しよう。


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