日本の労働生産性の動向 ~保健衛生・社会事業のシェア拡大による生産性押し下げが続く中、期待される設備投資を通じた生産性上昇~
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2018/10/24
調査部 中田 一良


○日本の労働生産性は、リーマン・ショック後の2009年に低下したものの、長期的には緩やかな上昇傾向で推移している。労働生産性の動向を製造業と非製造業に分けてみると、製造業のほうが上昇率が高くなっている。


○製造業全体の労働生産性上昇率に対する各産業の寄与をみると、2000年代にかけて、付加価値デフレーターの下落が著しかった情報・通信機器、電子部品・デバイスの押し上げが大きいという特徴がみられる。2000年代半ばにかけては、繊維製品の押し上げも大きいが、これは労働生産性上昇率の低い産業のシェアの縮小が製造業の労働生産性の上昇に寄与したものと考えられる。


○非製造業の労働生産性の平均上昇率(1994年~2016年)を産業別にみると、情報通信業が最も高い。1990年代後半から2000年代前半に移動通信など情報通信サービスに対する需要が増加する中、通信料金が低下した。このことは情報通信業の実質付加価値の増加となって表れ、労働生産性の上昇に寄与したとみられる。他方、電気・ガス・水道・廃棄物処理業、介護などが含まれる保健衛生・社会事業などでは労働生産性上昇率はマイナスとなっている。


○各産業の労働生産性の動向や、産業構造の変化が経済全体の労働生産性にもたらす影響をみると、各産業の労働生産性の動向の影響が大きく、産業構造の変化がもたらす影響は相対的に大きくないことが伺える。労働生産性の水準および上昇率が低い保健衛生・社会事業のシェアの拡大は、経済全体の労働生産性上昇率を押し下げたものの、農林水産業、繊維製品、建設業といった労働生産性の水準が低い産業のシェアが低下することにより、保健衛生・社会事業による下押しの影響は緩和されていたとみられる。


○今後、高齢化の進展に伴い、保険衛生・社会事業のシェアが拡大し、現在と比べると経済全体の労働生産性上昇率に対する下押しの影響はわずかではあるが、拡大する見込みである。こうした中、経済全体の労働生産性の上昇に向けて、各産業の労働生産性上昇率を高めていくことが重要となる。ソフトウェアや機械・設備などの設備投資を積極的に行い、就業者一人当たりの実質純資本ストックを増加させることなどにより、労働生産性上昇率を高めていくことが期待される。


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