デフレ脱却で経済成長力は高まるのか? ~企業の付加価値創出力の向上が日本経済の真の課題~
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2010/05/25

○日本経済はリーマン・ショック後の大幅な景気悪化から抜け出して持ち直しの動きが続いているが、日本の消費者物価は主要国で唯一、足元でも下落が続いている。こうした状況を受けて、政府、日本銀行、与党の間ではデフレからの脱却が重要な政策課題に浮上してきている。

○日本の物価変動の特徴を所得分配面からみると、賃金コスト要因による押し下げ寄与が大きく、企業所得要因による押し上げ寄与が小さいことが指摘できる。他方、支出面・商品面からみると、個人消費デフレーターや消費者物価が下落傾向にあり、特にサービス価格が上がらないことが大きな特徴になっている。サービス価格は賃金と密接な関係があり、総じてみると、日本においてはマクロ的な需給の悪化が物価や賃金の伸びを抑制していると推察される。

○デフレと実体経済の関係を4つのポイントに整理すると、第1に、物価の変動が景気や失業に対して与える影響は必ずしも明確ではない。第2に、デフレと景気悪化がスパイラル化しなければ、デフレにはプラスとマイナスの両面があり、全体ではゼロサムである。第3に、現状では、デフレによって債務者から債権者への意図せざる所得移転が生じて景気が悪化する事態は考えにくい。第4に、1990年代と異なり、足元ではデット・デフレーション発生の可能性は小さい。以上から、デフレ自体が近年の日本経済低迷の直接的な原因になっているとは考えにくい。

○日本経済が長期的に低迷している真の理由は、企業の売上を伸ばす力が不足しているために、結果として、付加価値を十分に創出力できていないことだと思われる。日本企業が今後売上を安定的に伸ばしていくためには、輸出を増やすか、国内で1人あたりの消費額を引き上げるしかない。新興国を中心に海外では販路拡大の余地が十分に残っており、国内では潜在需要の見込めるサービス分野は多く存在する。インフレを起こせば自動的に日本経済の成長力が高まり、失業など雇用問題が解決するわけではない。(潜在)需要の変化に見合った産業構造の転換を粘り強く続けていくことが、日本経済が長期的な低迷から脱するためには不可欠だと考えられる。

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