新たな局面に入った企業のカネ余り ~守りの債務圧縮から攻めの投資へ~
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2012/03/09


○1990年代終わりから企業のカネ余り、資金余剰の状態が続いている。余剰資金は金融資産の拡大か金融負債の削減に使われるが、大きな流れとして、2000年代半ばまではバブル期に負った過剰借入の削減に使われ、それ以降は海外への投資に使われるようになっている。


○企業を債務負担の重さに応じて3つに分類し、資金調達や運用状況をみていくと、規模の大きい製造業が中心の軽債務企業は資金余剰が長年続いている。過剰債務がないため、余剰資金は海外投資に向かっている。規模の大きい非製造業が中心の中債務企業は、1990年代終わりから資金余剰になり、その資金は過剰借入の返済に充てられた。債務調整は最近になって概ね完了し、海外投資に資金が向かい始めている。小規模な非製造業が中心の重債務企業は、1990年代終わりから資金余剰になり過剰借入の返済を続けているが、依然として債務調整は終了していない。


○企業のカネ余りが続く中、銀行は、軽債務企業には海外M&Aなど投資銀行業務を中心に取り組んでいく必要がある。中債務企業に対しては、こうした業務に加え、サービス需要の変化に応じて国内で投資を行うための資金需要にも応えていく必要がある。重債務企業には、過剰債務を削減し前向きな投資が行えるような財務体質の構築を促すコンサルティング業務の推進が重要である。強固な財務基盤をベースに、融資やその他の業務で積極的にリスクを取り、企業の成長を後押ししていく姿勢が銀行には求められる。


○拡大する余剰資金が海外投資に向かい、それによって企業の利益が膨らんでも、その資金がまた海外投資に向かうのであれば国内経済の成長にはつながりにくい。企業が生み出す付加価値は、雇用者、政府、投資家などに分配されるが、国内で設備投資が伸びにくいのであれば、人材への投資という観点で人件費への分配を増やすなど、付加価値分配のやり方を見直すことも検討に値する。


○同じカネ余りでも、金融負債の削減局面はバランスシートの縮小を意味するが、金融資産の拡大局面はバランスシートの拡大をもたらし、企業経営としては「攻め」の意味合いが強い。この点、国内外で事業拡大の余地が大きい中債務企業が金融資産の拡大局面に入ったことは特筆すべきだ。こうした企業で前向きな支出が増えてくれば、日本経済全体が縮み志向から脱する大きなきっかけになる。


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