米国の潜在成長力とシェール革命~金融危機の克服と「逆オイル・ショック」への期待~
全文紹介

2013/02/14
調査部 細尾 忠生


○ 金融危機をきっかけに米国の潜在成長率の低下が懸念されるようになった。しかし、潜在成長率を決定する労働供給、資本投入、生産性の動向をみると、2000 年代前半から潜在成長率がすでに低下しており、低成長期に移行していたことが分かる。低成長下での金融面の不均衡の蓄積がバブルとその崩壊を招いたといえる。一方、金融危機の前後で、労働供給、資本投入、生産性の動きは大きく変化しておらず、潜在成長率のトレンドが変化した証拠はみられない。


○ 金融危機をきっかけに潜在成長率が低下するのは、バランス・シート調整が企業の期待成長率を低下させることが主因である。米国では金融危機後のバランス・シート調整が比較的早期に進み、企業の期待成長率の低下を回避できたことが、潜在成長率のトレンドが変化しなかった要因であった。


○ 戦後の米国の潜在成長率を振り返ると、4%程度の潜在成長力があったオイル・ショックまでの高成長期、3%程度の成長力があった1990 年代末までの中成長期、2%程度に低下した2000 年以降の低成長期の3 つの時期に区分できる。今後も金融危機前と同様に2%程度の潜在成長率を維持する見通しである。


○ 「シェール革命」はエネルギー支出の減少による直接効果だけでGDPの0.3%に相当する所得の押し上げ効果があるとみられ、資本投入や生産性の上昇を通じ潜在成長率の維持を担保する。間接的な波及効果については、今後の政策やエネルギー価格に影響されるが、エネルギー輸出が本格化すれば海外からの富の移転が進む「逆オイル・ショック」も期待でき、米国が再び中成長局面に回帰する上ぶれシナリオも無視できないであろう。


○ 米国は競争的な経済環境を維持しながら「シェール革命」という新たな活力源を生み出し、世界経済の成長エンジンであることに変わりない。潜在成長力を決める資本投入や生産性は、過去の経済実績に左右されるため、潜在成長率ペースでの持続的な経済成長こそが、将来の経済成長を担保する最大の要因である。経済成長の持続こそが、長い目でみれば資本投入や生産性の上昇を通じ、経済的な衰退を回避する正しい道であろう。


全文紹介 前のページへもどる

ページの先頭へ

1234567890