賃金は上がるのか?~無理な賃上げは雇用に悪影響を及ぼす恐れ~
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2013/03/27
調査部 尾畠 未輝


○1990年代後半、国内景気が悪化し、企業の人件費抑制姿勢が強まったことを受けて、賃金は減少傾向に転じた。年功序列から成果主義へと賃金制度の見直しが進んだことで、所定内給与が上がりにくくなった上、企業収益の増加は賃金に十分に反映されず、ボーナスも減少してきた。


○業種別に見ると、製造業の賃金は緩やかに増加しているが、非製造業では大きく減少し全体の賃金を押下げている。製造業では雇用者数の削減によって人件費を減らした一方、非製造業では雇用の非正規化を進めることで人件費の増加を抑制してきた。この結果、非製造業では、短時間労働者の賃金は横ばいを維持しており一般労働者の賃金もそれほど減少していないにもかかわらず、賃金水準の低い短時間労働者のウエイトが高まったために、賃金は減少してきた。


○厳しい国際競争にさらされる製造業では、人件費は減少している。就業者ベースでみた生産性は上昇しているものの、雇用者数が減少しており、国内総生産は減少している。一方、非製造業では、人件費は緩やかに増加している。就業者ベースでみた生産性は低下しているものの、雇用者数は増加しており、国内総生産は横ばいを維持している。結果的に、就業者一人あたり国内総生産が少ない、すなわち生産性が低い非製造業へと雇用のシフトが進んできた。


○足元では、景気回復への期待が高まっているが、企業がすぐに人件費抑制姿勢を和らげるとは考え難く、製造業における雇用者数の削減と、非製造業における雇用の非正規化の動きは続くとみられる。非製造業を中心に短時間労働者の需給は引き締まり、賃金に上昇圧力がかかる可能性があるため、全体でみた賃金は下げ止まる可能性があるが、増加するまでには至らないだろう。さらに、消費税率引き上げもあって、実質ベースでみた賃金は大きく減少することになる。


○アベノミクスの下、一部では賃金を引き上げる企業もみられるが、企業業績が十分に回復していない中、賃金の増加が優先されると、雇用に悪影響が生じる懸念がある。製造業では雇用者数の削減、非製造業では雇用の非正規化という動きがさらに加速する可能性がある。


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