高齢化しても活力がある米国の労働市場 ~ トランプ政権が抱える危うさと真の課題 ~
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2017/05/23
調査部 尾畠 未輝


○米国では2000年代以降、雇用者数の伸びが弱まっているが、その背景には労働参加率が低下していることがある。主因は高齢化が進んだためであるが、各世代の参加率も低下傾向にある。特に働き盛りとされる25~54歳男性では、産業構造の変化に上手く適応することが出来なかったために、参加率の低下に繋がったと考えられる。


○足元で労働市場がほぼ完全雇用の状態にあることや、高齢化の進行が雇用拡大の下押し圧力となっていることは日本と同じ状況である。しかし、米国では高齢化が進む中においても、労働力の中心となる生産年齢人口は移民の支えもあって増え続けており、それが労働市場の活力の源泉となっている。さらに、企業の姿勢は前向きであり、景気の改善に伴う雇用のタイト化が、賃金と物価を上昇させるという好循環に繋がっている。


○アメリカ人の雇用創出を目標に掲げるトランプ大統領は製造業の復活を目指しているが、製造業では雇用を削減することで生産性の上昇を図ってきた面があり、単に国内で雇用を用意することだけでは生産性を低下させ成長の下押し要因になってしまう懸念がある。重要なのは雇用を増やしながら生産性を高めることであり、そのためには地道に製品の付加価値を上げていくことが大切だろう。


○また、厳しい移民政策もトランプ大統領の掲げる目玉政策の一つである。足元では、H-1Bビザの見直しによる入国厳格化が進められつつあるが、H-1Bビザの発給が多いIT関連の産業は外国人雇用が多い中でも生産性が高く、本来、移民の支えによって一段と拡大させていくことは米国全体の生産性上昇に寄与するものである。


○今後はベビーブーマー世代の高齢化が本格化する中で、生産年齢人口の伸び率が低下する見通しであり、雇用者数が一段と増えていくためには各世代の労働参加率の上昇が欠かせない。今後、特別なスキルを持たない中間層を取り巻く雇用環境は厳しさが増すと予想されるが、彼らが再び労働市場に参加するためには、雇用の受け皿を用意することよりも労働者自身のスキルを上げることが重要だろう。


○また、既に足元で失業率は均衡失業率に近付いており、一段と失業率が低下するためにはリーマンショック後に拡大した雇用のミスマッチの解消が欠かせない。労働市場の新陳代謝が活発になれば、雇用のミスマッチの解消に繋がりやすくなることで失業率の更なる低下が見込まれるだけでなく、雇用の拡大が一段と進むことも期待できるだろう。


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