所得ショックを乗り越え長期停滞を脱する個人消費~世代ごとに進んできた所得減少への対応と今後の展望~
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2017/11/06
調査部 土志田 るり子


○家計の実質消費支出は、93年をピークに、四半世紀近くにわたって減少傾向が続いてきた。消費は基本的に所得と連動するが、足元では所得が持ち直しているにもかかわらず、消費は停滞が続いている。その原因として、所得の減少が続いた期間が非常に長かったことで、1世帯あたりの所得を生涯にわたって積み上げた「生涯所得」への影響が大きなものとなり、世帯の消費意欲を下押ししてきたことが考えられる。


○80年代には増加して当たり前だった所得は、90年代のバブル崩壊や金融システム不安といった経済・金融環境の変化を背景に、98年に減少に転じた。この影響で、足元で生涯所得の水準が大きく低下しているだけでなく、貯蓄・負債の状況が悪化しており、消費支出の低迷につながっているとみられる。また、毎年生涯所得の見通しが下振れしてきたことで、98年よりも前に就職した世代では、再び生涯所得が減る警戒感から、生涯所得を低めに見積もる状況や、消費に消極的な姿勢が続いていると推測される。


○もっとも、所得が減り始めた98年以降、各世帯では所得減少への対応を進めてきた。内容は世代によって異なり、例えば、男女雇用機会均等法の成立より後に就職した世代では、女性が結婚や出産を経ても仕事を続けやすい環境になったことなどを背景に、ダブルで稼いで世帯所得を増やす対応が進んできた。消費についても、ダブルで稼ぐことが難しい世代では消費支出を抑える対応が進んだほか、経済や金融環境の変化を背景に、ダブルで稼ぐ世代でも自動車を購入しないという選択が広がるなど、消費の選択に変化があった。


○足元の所得増加により生涯所得の見通しはすでに底打ちしており、今後、小幅でも所得の増加が続けば、生涯所得の見込みは上振れが続く。これが、消費マインドを改善させる可能性がある。また、新しく労働力人口となる世代はスタート時点の所得が高く、生涯所得も前の世代よりは高い水準での推移が見込まれる。所得減少を経験していない世代は消費にも前向きと考えられ、世代交代が進むことも消費の回復に寄与するだろう。


○もっとも足元で現役世代の負債が増大していることや、社会保険料負担が増していることは、消費の回復を遅らせる要因である。このため、所得の増加がすぐに消費の持ち直しに結びつくわけではないが、消費意欲の高い世帯が増え、さらに生涯所得が安定して伸びていくと確信を持てる環境が整えば、消費も堅調に増加を続けるようになるだろう。


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