2016年7~9月期のGDP(1次速報)結果
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2016/11/14
調査部 小林 真一郎


本日発表された2016年7~9月期の実質GDP成長率は、前期比+0.5(年率換算+2.2%)と3四半期連続で増加し、景気が横ばい圏内の動きから抜け出しつつあることが改めて示された。もっとも、中身を見ていくと、外需主導の回復であって、内需の伸びは小幅にとどまっているなど、回復の勢いに力強さはない。


個人消費は、前期比+0.1%と4~6月期の同+0.1%に続き、小幅の伸びにとどまった。名目の前期比は-0.1%と4~6月期の同-0.1%に続き2四半期連続で減少したが、個人消費デフレーターが前期比-0.2%と落ち込んだため、実質値が押し上げられた。雇用・所得情勢の改善というプラス要因にもかかわらず、夏場の天候不順の影響に加えて、節約志向の継続や株価下落などを背景としたマインドの低迷もあって、消費者の財布のひもは堅いままである。実質雇用者報酬は前年比+3.0%(実質季節調整値では前期比+0.7%)と堅調な伸びを続けているが、支出の増加につながっていない。


住宅投資は、先行する住宅着工件数の水準が足元で切り下がっているが、4~6月期までは順調に増加していたことを受けて、前期比+2.3%と増加が続いた。


企業部門では、設備投資が前期比横ばいとなり、横ばい圏での動きが続いている。維持・更新需要を中心に底堅さは維持されているとみられるが、製造業を中心に業績が悪化する中で、企業が国内での新規投資の大幅な積み増しには慎重になっていると考えられる。


在庫投資の実質GDP成長率に対する前期比寄与度は-0.1%となった。企業の在庫調整の動きが続いていることを背景に、成長率の押し下げに寄与した。


以上の結果、民需全体の前期比寄与度は横ばいとなり、4~6月期の同+0.3%から鈍化した。これに対し、公的部門の前期比寄与度も同横ばいにとどまった。医療費などを中心に政府サービスに対する需要が趨勢的に増加していることに加え、4~6月期に前期比-0.3%と落ち込んだ反動もあって、政府最終消費支出が同+0.4%と増加に転じたものの、2015年度の補正予算による押し上げ効果が一巡したことで公共投資が同-0.7%と3四半期ぶりに減少した。このため、民需の弱さをカバーすることができなかった。


民需と官公需を合わせた内需の前期比寄与度が+0.1%と小幅の伸びにとどまったのに対し、外需寄与度は+0.5%と高い伸びとなり、全体を大きく押し上げた。輸出は、熊本地震による供給制約などによって低迷していた自動車輸出が持ち直したことや、海外での半導体電子部品の需要の持ち直しなどから、前期比+2.0%と堅調に増加した。一方、輸入は内需の持ち直しの弱さを反映して、同-0.6%と3四半期連続で減少した。


名目GDP成長率は前期比+0.2%(年率換算+0.8%)と小幅の伸びにとどまった。また、経済全体の総合的な物価動向を示すGDPデフレーターは前年比-0.1%と2013年10~12月期以来、11四半期ぶりにマイナスに陥った(季節調整済み前期比では-0.3%と2013年4~6月期以来、13四半期ぶりのマイナスとなった)。原油など資源価格の底打ちを受けて輸入物価の落ち込み幅がやや小さくなっていることに加え、国内需要デフレーターのマイナス幅が4~6月期の前年比-0.7%から同-1.0%に拡大したことが影響した。内需の弱さや、円高による輸入物価の下落の影響が国内物価にも浸透してきたことを受けて、物価下落圧力が再び強まりつつある。


10~12月期以降も、実質GDP成長率はプラス基調で推移すると予想され、景気は横ばい圏での動きから脱し、緩やかな回復基調に転じるであろう。雇用・所得情勢の持ち直しや物価の下落といった家計にとってのプラス要因が維持されることに加え、天候不順の影響が剥落するため、個人消費が底堅さを取り戻すと期待される。また、世界景気の回復を受けて輸出が徐々に増加していくほか、2016年度補正予算の執行による景気押し上げ効果も年度末にかけて徐々に強まると見込まれる。


しかし、景気の持ち直しテンポが急速に高まることも難しい。足元で生産を押し上げてきた自動車の挽回生産やスマートフォン関連財の輸出増加による効果は年内には一巡する見込みである。また、慎重な姿勢を堅持している企業の設備投資意欲が急速に持ち直すことも期待しづらい。さらに、持ち直しつつある海外景気の先行きについても、波乱要素が残る。トランプ新大統領の誕生を受けて米国の景気回復期待が急速に強まり、米国株価は連日、史上最高値を更新している。しかし、トランプ氏の言動を巡って再び金融市場が混乱し、それが長期化すれば、世界経済の悪化懸念が高まってくるであろう。そうなると、日本からの輸出にも影響が出るほか、円高、株安が進むことによって企業や消費者のマインドの悪化につながる。


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