物価上昇目標は見直すべきだ

2017/03/09

日銀が2%の物価上昇を金融政策の目標に掲げているのは、それを達成することが日本経済にとって望ましいと考えているからだろう。一方で、その目標が一向に達成できていない理由の半分は原油価格が大幅に下落してきたせいだという。では、輸入原油価格が上昇する方が日本経済には望ましいのか。ならば話は簡単だ。OPECにでも頼んで、日本向けの輸出価格を引き上げてもらえば一気に解決だ。

こんなおかしな話になるのは、消費者物価を対象にして目標を設定しているからだ。消費者物価の上昇を目標にするから、原油価格下落は目標達成の妨げになるし、逆に、円安進行は輸入価格の上昇を通じて国内物価を押し上げるので望ましいことだとなる。

しかし日本経済にとって本当に望ましい状況とは、所得が増える一方、物価の上昇はその範囲内に収まるような姿であるはずだ。円安のせいで物価が上昇すれば実質所得が海外に流出してしまう。国民生活は所得が増えないのに物価だけが上がってしまうような事態に陥ってしまうのだ。

その点、対象とする物価指数をGDPデフレーターにすれば、物価上昇と国民の満足度向上とがある程度一致する。総合的な物価指数と称されるGDPデフレーターは「実質国内総生産1単位当たりの名目国内総所得」だと言い換えられる。したがって、例えば輸入原油価格が下落すれば、海外への支払額が減って国内所得が増えるので、GDPデフレーターは上昇するのだ。

人々の期待に働きかけるという日銀の政策は、皆が貨幣数量説の信奉者でもない限り機能しない。結局これまでの政策は、円安を進行させ、輸入価格の上昇を通じて目標を達成しようとするものだった。

しかし国民の利益に合致しない物価上昇を実現させることに意味があるのだろうか。国民が望むのは所得の増加であって物価の上昇ではないはずだ。

(2016年12月15日 日本経済新聞・夕刊 『十字路』」より転載)

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