日銀による財政ファイナンス

2017/11/01

安倍晋三首相は、消費税の使い道を変えて教育費の無償化を図るというが、その税収は元は財政赤字の削減に充てるべきものだった。実質的には財源を手当てせずに教育費の無償化を実現しようとすることに等しい。「全世代型」の社会保障制度を実現するのに、世代間の配分額を変えるのではなく、単に総額を増やして対応するというわけだ。財政健全化に向けた本気度が疑われる。

2020年度に国と地方を合わせたプライマリーバランスを黒字化する目標は、ギブアップ寸前だったが、これであっさり先送りされそうだ。景気がよいと自賛する現状でも「痛み」を回避する姿勢を変えないのだから、プライマリーバランスの黒字化が実現する時期は全く見通せない。

一方、金融政策は「異次元」の緩和が続いている。現在の「長短金利操作付き」緩和政策は、日銀が長期金利もコントロールするというものだ。財政の健全性が後退し続ければ、市場で長期金利が上昇するのが自然だが、日銀はそうした上昇も許さないのだ。

そのための手段は国債の購入だ。最近の日銀は国債の購入ペースを落としているようだし、今の緩和政策の出口に向けて、購入額を段階的に削減していくべきだとする議論もある。しかし、日銀が国債の購入を止め、保有額自体を減らしていくことが出口だとすれば、そのような出口はないと覚悟すべきだ。財政の悪化が続く中で長期金利の低位安定を維持するには、日銀は国債購入をむしろ増やしていかざるを得ないからだ。

日銀が始めた国債の大量購入政策にはデフレ脱却効果はなかった。それでも引き返さず、縦穴をさらに掘り進むうちに、意図に反して財政赤字を埋める「財政ファイナンス」に変性してしまっている。出口とは実は入り口のことだが、もはや元には戻れまい。

(2017年10月20日 日本経済新聞・夕刊 『十字路』」より転載)

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