輸出が主導する景気回復

2017/12/28

◆景気の回復をもたらす輸出数量の増加

今年7-9月期のGDP(改定値)は前期比0.6%の増加、年率では2.5%増となった。年度後半(10-12月期、2018年1-3月期)の成長率が仮にゼロであっても、17年度全体では1.7%成長になる勢いだ。16年度の1.2%成長を上回るだけでなく、年度当初には楽観的すぎるとも言われた政府見通し(1.5%成長)すら超えることが確実な情勢だ。

経験的に、景気とパラレルに動く鉱工業生産指数を見ると、昨年4-6月期を底に一貫して上昇しており、今年7-9月期までの5四半期で通算6.2%増加し、その後も増加が続いている。消費税率が引き上げられた14年4月以降は低迷が続いた我が国の景気だが、昨年夏からは着実に回復してきているのだ。

なぜ景気が回復しているのか。その理由を示すのが輸出の動きだ。輸出数量指数も、昨年4-6月期を底に上昇が続いていて、今年7-9月期までの5四半期の累積増加率は6.9%だ。輸出数量の増加が続けば、そのための生産が増え、雇用が増え、仕入れが増え、そして設備投資を増加させる要因にもなる。我が国の典型的な景気回復のパターンが現在進行中なのだ。

◆世界経済の回復の原動力は米国と中国

では、輸出はなぜ増えているのか。円安が進んでいるからか。ドル円相場の推移をみると、昨年4-6月期の108.17円から今年7-9月期の111.01円へと3円弱の円安だ。しかし、より長い期間で為替相場と輸出数量の関係をグラフにすると、少なくとも2000年以降の十数年間を見る限り、「我が国の輸出数量と為替相場(ドル円相場)との間に因果関係は認められない」ことが確認できる。つまり、円安が進行すると輸出数量が増えるとか、逆に円高が進行すると輸出数量が減るといった関係は見られないということだ。

これは、我が国の主要な輸出品の多くが強い競争力を持っているため、為替相場の変動の影響を受けにくいということもあるだろう。また多くの輸出企業が、為替相場が変動しても、輸出品の現地価格をあまり変更しないということも効いているのだろう。少なくとも現状は、円安が進んだから輸出数量が増え、だから生産が増えて景気が回復しているわけではないのだ。

輸出数量を増やしているのが「価格効果(円安)」ではないとすれば、その理由は「数量効果」だということになる。つまり、輸出先の国々の景気がよくて輸入が増えているので、見合って我が国の輸出も増えているという図式だ。確かに、IMFが3か月ごとに発表している「世界経済見通し」を見ると、世界経済が着実な回復軌道にあることがわかる。

昨年(暦年)3.2%だった世界経済の成長率は、今年は、10月時点の見通しでは3.6%に加速している。3か月前の7月時点の見通しでは3.5%だったから、回復ペースが改善しているのだ。背景にあるのが、合わせて世界のGDPの4割を占める米国と中国の経済の好調だ。米国経済の成長率は、16年が1.6%だったが、17年は2.2%に加速する見込みだし、中国経済も16年が6.7%、17年が6.8%と好調だ。米・中両国は輸入額でも世界第1位と第2位だから、「米中の成長率加速→両国の輸入増→世界の輸出増」という流れになっているのだ。

◆回復の基調は新年も続く

では来たる18年の我が国の景気はどうなるか。単純に考えれば、世界経済の回復がこのまま順調に推移すれば、輸出数量の増加が続き、新年に入っても景気の回復が続くことが期待できる。

そこでIMFの見通しを見ると、世界経済の成長率は17年の3.6%から18年は3.7%へと若干高まっている。今の勢いが新年も続くという見立てだ。では、18年の米中経済はどうかといえば、米国は2.3%(17年は2.2%)、中国は6.5%(同6.8%)だ。米国は大丈夫で中国は減速するという予測であるが、中国については、今年4月時点では6.2%まで減速すると見られていたものが、7月には6.4%、10月には6.5%に上方改訂されている。強気の見通しに変わってきているわけだ。こうして世界経済が今の勢いを持続するのであれば、新年の我が国の景気も今の好調を維持することが期待できる。

要である米中経済の先行きについて付言しておこう。まず米国だが、今月13日に今年3回目の利上げが決まった。15年末から始まった利上げはこれで5回、通算1.25%の引き上げだ。ただし、景気にブレーキをかけようとする利上げではない。FRBは物価が十分に上がらないことをむしろ懸念しているくらいだから、利上げも景気の回復を妨げないことが大前提だ。すでに9年目に入った景気の回復が、いずれどこかでピークアウトする際には、利下げで景気の悪化を軽微に止める必要がある。そのための「下げ余地」を作っておくための利上げだ。だから、利上げで景気が悪くなる懸念は小さい。実質賃金の増加も続いているので、底堅い個人消費が経済成長の持続性を高めている。

一方、中国経済は、「投資のしすぎ」と「お金の借りすぎ」の後始末をつける必要がある。バランスシートから過剰な生産能力と過剰な負債を削減する「ストック調整」が避けられないし、現在進行中だ。この調整が経済成長の頭を押さえるわけで、行き過ぎると景気の失速を招く。その不安が18年の成長率見通しにも反映されてきたのだが、最近ではそれが改善しているということは、失速懸念が和らいできていることを意味している。

恐らくだが、第2次産業で進行しているストック調整によるマイナスの影響を、急速に成長している第3次産業の勢いが薄めているのではないか。中国に行ってみると、IT関連のサービス産業の成長ぶりを肌身で感じる。産業構造の転換は中国政府の強い意思でもある。それがうまく機能すれば、中国経済が2ケタ成長からのソフトランディングに成功する可能性が高まる。

(三菱UFJビジネススクエアSQUET 情報スクエア「五十嵐敬喜の『経済をみる眼』」2017年12月15日より転載)

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