円安政策の行き詰まり

2018/04/16

日銀の黒田東彦総裁が再任されたのは、安倍晋三首相が強く望んだからだろう。安倍首相は2012年末に政権を取る前から、デフレと行き過ぎた円高の是正を経済政策の柱に据えてきた。そのために放った3本の矢のうち第1の矢である「大胆な金融緩和」を担ってきたのが黒田総裁だ。おかげで円高が是正され、デフレと言うほどの状況ではなくなってきたのは、黒田総裁の最大の功績だと安倍首相は評価しているのだろう。

ただ日銀の政策はこの5年間でかなり変質している。当初は「異次元」と称する大量の資金供給によって物価上昇予想を高めることが中心だったが、うまく機能しなかったため16年にマイナス金利政策を導入した。しかしこの政策は極めて評判が悪く、反発も強かったので、半年ほどで見直され、現在のイールドカーブ・コントロール政策がとられるようになった。

今の政策は、要するに債券の利回りが下がりすぎないように(もちろん上がりすぎるのも不可)、量的緩和を加減するものだ。もともとは国債を年間80兆円も購入する目標だったが、「内生的に決まる」とされる今の購入ペースはほぼ半減だ。金利引き下げも量拡大も後退させた現在の緩和政策は、もはや「異次元」ではあるまい。

さて今後、何らかの理由で円高が進んだらどうなるか。これまで大胆な緩和のおかげで円安が進行したのだとすると、この先の円高を止めるには緩和の再強化が必要だ。しかし現実は、物価上昇目標も達成されていないのに緩和を弱めざるを得ない状況だ。金融政策では円高は止められない筋合いだ。残る手段は介入だが実行のハードルは高く、やっても単独介入では効かないことも常識だ。ひたすら円安進行に頼ってきた経済政策が行き詰まってしまう。

(2018年3月29日日本経済新聞・夕刊 『十字路』」より転載)

前のページへもどる

ページの先頭へ

1234567890