出口に向かう気はあるのか

2018/06/04

2%の物価上昇目標の達成時期を6回も先送りしてきた日銀が次に決めたのは、目標自体を見直すことではなく、今後は達成時期に言及しないという方針転換だった。市場は、デフレ脱却が持久戦化し出口が遠のいたと理解した。

問題は、出口はトンネルを掘り進んだ先にあるのでなく、実は入り口だということだ。今の緩和を続ければ続けるほど、元に戻る(正常化する)ための時間と困難が増してしまうのだ。

今の金融政策は、長期金利をコントロールするのに必要な量だけ日銀が市場で国債を購入するというものだ。結果として、新規発行の10年物国債の8割以上が3か月以内に日銀の金庫に入っているという。今後、長期金利に上昇圧力がかかっていくことになれば、「中央銀行による国債の直接引き受け」の様相が一層、強まることになる。

その懸念をかき立てるのが、財政健全化目標の達成時期の先送りが繰り返されることだ。「経済成長なくして財政健全化なし」を標榜する政権には、目先の財政状況を悪化させてでも経済成長を優先させたいという意向がある。

しかし経済成長は必要だがその手法は間違いだ。財政支出が景気を押し上げる効果はほぼ1回限り。財政を経済成長の原動力にするには、支出を増やし続けなければならないが、今やその余力がないのは明らかだろう。「財政支出を増やして財政を健全化させる」ことなど不可能なのだ。

中期的に今後を展望すれば政策の失敗で財政が一層悪化し、長期金利の上昇圧力が高まり、それを日銀が必死に抑え込もうとする、そんな展開になる恐れがある。国債を発行するそばから日銀に買わせるのはタブーだ。タブーを犯せば市場の反撃を食らう。ただその被害者は我々というよりむしろ次世代の人々だ。

(2018年5月16日日本経済新聞・夕刊 『十字路』」より転載)

前のページへもどる

ページの先頭へ

1234567890