「海外企業M&A」成功の秘訣

2018/04/06

日本企業による海外企業の買収(M&A)は、日本企業の資金に余裕があるという事情もあってこのところ増え続けている。レコフが発表した2017年の日本企業による海外企業の買収は前年比5.7%増の672件で、4年連続で過去最多を更新したという(時事ドットコム2018.1.4)。

どのような企業を買収すべきか、その目利きはどうしたらよいのかといった問題に加えて、海外企業を買収した多くの日本企業にとって頭の痛いのは、買収後の海外企業の統治をどうするかという(いわゆる「PMI」、Post Merger Integration)問題である。

日本式の経営手法をそのまま移転させても多くは成功しない。よくも悪しくも、日本の経営手法や組織は国際的に見て相当ユニークだからである。断っておかなければならないのは、ユニークだからダメだと言っているのではない。日本人にしっくりくる経営手法は、日本では結構うまくいってきた。日本のユニークな経営手法を「時代遅れ」だとか言う人がいるが、そんなことはない。問題は、それを海外に移転するときに起こる。日本人にはしっくりくる組織や人事制度も、歴史や価値観、社会構造が異なる多くの海外企業にそのまま移転することは難しい、ということなのだ。

日本企業の第1の失敗は、日本のやり方をそのまま買収した相手の会社に押し付けてしまうことだ。十分な準備もなしに日本のやり方を押し付けられても、海外企業は受け入れることができない。現場も期待通りに動かないし、管理職もやめてしまうかもしれない。

もちろん、トヨタをはじめ、日本におけるオペレーションのベスト・プラクティスを海外移植することに成功したケースもないわけではないが、これは車というきわめて複雑なすり合わせ技術が必要な製品特性によるところが大きい。家電など、モジュール化やコモディティ化が進んだ産業では、これだけでは競争力を維持できない。どうしても、現場のオペレーションを超えた「経営力」そのものの競争力が問題になる。

問題は、どうすれば買収した海外企業に、日本企業の経営手法がうまく伝わり、競争力を高めることが可能になるのかだ。いや、海外には海外のやり方があるのだから、経営は現地に任せた方がよいという考え方もある。しかし、何もかも任せてしまったのでは、何のために買収したのか説明がつかない。そもそも買収するに当たっては、相手企業よりも自分たち(日本企業)が経営に当たった方が効率がいいという判断があったはずだ。したがって、日本企業が持つ強みのエッセンスを買収企業に移転できなければ、買収する意味がないということになるだろう。

おそらく、オペレーションのレベルでは、現地の状況に合わせたやり方を現地のマネジャーたちに委ねてしまうという割り切り方は多くの業種で不可避であろう。箸の上げ下ろしまで、本社がいちいち口をさしはさむようでは、現地のオペレーションはおそらく失敗するだろうからだ。

かといって、何から何まで現地任せにしてしまうと、やがて「糸の切れた凧の状態」になってしまう。大事なのは、オペレーションは基本的に現地に任せるが、経営を左右すると思われる重要事項(経営理念、役員人事や報酬体系、事業計画、R&Dなど)については、日本本社が明確な形で統治し、管理できるということである。

この点で言えば、日本たばこ(JT)のM&Aは見事に成功した事例の一つだと思う。興味ある方には、新貝康司氏による『JTのM&A』という名著を強く推薦しておきたい。

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