小規模農家のビジネスモデル

2011/11/07
公共経営・地域政策部 主任研究員 小谷 幸司

 消費者の食に対する安全・安心志向は、東日本大震災以降、ますます高まっている。また、先進国の中でも目立って低い食糧自給率の向上は、我が国にとって大きな政策課題でもある。こうした中、人口減少や少子高齢化、景気低迷等に伴って活力を失いつつある地方部では、基幹産業である農林水産業の振興(6次産業化や農商工連携も含む)が地域経済・産業の活性化の柱として期待される
 地方部には、安全性が高く、品質や食味の優れた農産物を生産する小規模農家が存在する。これら農家の多くは、生産物のロットやアイテムの少なさ等供給力の限界性から、商品価値の市場浸透が進まず、有利販売できる適切な販路の開拓・拡大が進まない点に課題を抱えている。一方、最近では高付加価値な加工品を商品化したり、適切な販路を開拓・拡大するなど、成功モデルとも言える小規模農家が現れている。
 その代表的な一事例として、2010年に青森県津軽地域で誕生した「津軽ファーマーズクラブ(以降、津軽FC)」があげられる。津軽FCは、津軽地域の優れた農産物・加工品を生産する10軒の農家が連携した合同会社である。個々の農家はそれぞれ販路を保有するが、農家同士が連携することによって生産物のロットやアイテムを多様化させ、更なる販売拡大を目指すとともに、津軽FCとしてのオリジナル商品(加工品)の開発を検討するなど、津軽地域の農産物のブランド力向上に取り組んでいる。青森県の事業を活用して首都圏での販路開拓に取り組み、津軽FCの商品として一部取引がはじまるなど着実に成果をあげている。また、BtoBの拡大において課題視されていた受発注システムの一元化も、体制が整備されつつある。さらに、JR青森駅に隣接する「A-FACTORY」では、主に観光客をターゲットとした直売(常設)を展開するなど、地元での販売拡大にも取り組んでいる。
 一方、個々の小規模農家が、生産規模に応じて着実にリピータを確保し、経営を安定化させているモデルもある。その代表的な事例が、ここ数年、全国の主要都市を中心に広がりをみせるマルシェを活用したモデルである。ここで指すマルシェとは、週に1~2回程度、生産者自らが店頭に立って販売する仮設型直売所であり、道の駅等の常設直売所とは異なる。マルシェ自体での売上げは決して大きくないが、生産者自ら行う商品説明に価値を見出す消費者は多く、店頭だけでなく個人宅配等の売上げを伸ばす生産者も多い。また、消費者ニーズに直接触れることで、それに対応して栽培品目を変えたり、販売方法を工夫することで売上げを伸ばす農家もある。さらに、マルシェを訪れたバイヤーやシェフ等の目にとまり、取引が開始される事例もある。
 以上のような事例は、付加価値の高い農産物や加工品を生産していても、販売拡大に課題を抱える小規模農家にとって効果的なビジネスモデルであるとともに、地方部の地域振興や食料自給率向上の面からも広がりが期待される。

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