緊急物資輸送ネットワーク形成に見る教訓と課題

2012/01/12
研究開発第2部(大阪) 主任研究員 中尾 健良

 東日本大震災における緊急物資輸送では、その任務の重大さや過酷さが刻々と伝えられ、「公共物流」の役割の重要性があらためて確認された。そして、円滑な緊急物資輸送を立ち上げ、効果的に運営していく上で多くの教訓や課題が浮き彫りとなった。
 ひとつは、民間事業者における輸送手段や物流ノウハウが極めて有効であった点が注目されている。緊急物資輸送においては、民間事業者の物流ノウハウや、設備、機器を有効に活用していくことが重要であり、今後、一層、緊密な連携体制を構築するための仕組みづくりが進められると思われる。
 また、東日本大震災のような広域的な甚大災害では、国と自治体だけでなく、自治体間の連携が極めて重要であることが示唆された。今回のような大規模災害への対応については、被災地、支援地ともに複数都道府県にまたがることから、国が統括して指揮する。しかし、緊急物資輸送において、広域輸送・集配拠点のオペレーションや運営は各都道府県が担当し、また、各避難所からあがってくる情報は基礎自治体が掌握するところとなる。こうした仕組みにおいては、国および自治体間相互で円滑な情報連携体制を構築することが不可欠である。
 各自治体では緊急時の行動指針を防災計画において明確に定めている。ところが、この防災計画に記載された内容を各都道府県の横並びで比較すると、例えば、物流事業者への協力要請方法をあげても、統一されていない状況が散見される。今回の大震災においても、緊急物資輸送ネットワークを立ち上げる過程で、現場において混乱が生じたことが指摘されているのは、こうしたことが原因のひとつとなっている。
 今後、想定される東海・東南海・南海地震といった大規模災害では、臨海部を中心に支援を必要とする地域が広範囲に及ぶと考えられる。そこには、道路や港湾といったインフラが十分に整備されていないエリアも相当含まれている。災害時の緊急物資輸送は、限られた時間や資源の中で効果的に行う必要があり、極めて過酷な状況下で行わざるを得ないものと想定される。
 こうした状況にも対応しうる緊急物資輸送ネットワークを構築するには、官民の連携を図るための仕組みづくりに加え、自治体間での広域的な支援活動を念頭に置いた防災計画づくりが不可欠である。
 震災を契機に、現在、各自治体で防災計画の見直しが進められている。この中で、隣接する自治体間相互で災害時の情報流の妥当性や輸送ルートの連続性・一体性を点検することや、情報連絡体制や支援方法を標準化することが重要と考える。緊急物資輸送を担う物流事業者や他地域の応援部隊が、厳しい条件の中でも混乱を生じず、円滑に動けるための環境を整備しておくことが求められる。

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