これからの電源について、もっと国民的議論を

2012/04/06
研究開発第2部(大阪) 主任研究員 地域・環境戦略グループ長 永井 克治

 東日本大震災が発生して1年が経過した。しかしながら、生活や産業の基盤となるべきこれからの電源についてどのような姿が望ましいのか、未だはっきりと固まっていない。
 使い手側と作り手側、双方向での議論が必要になる。使い手側については、絶対的な量だけでなく、いかに季節や時間的なピークを減らすか、もう少し効率的に作り手側の負担を減らす使い方があると思われる。
 その上で、作り手側はどうすれば良いのか、これは非常に難しい問題である。まず、電源構成に関して、原子力発電をこれまでより減らすということについては、国民的合意が十分に取れていることは異論がないと思われる。ただ、どこまで減らすのか、全くなくしてしまうのか、議論が分かれるところである。また、電力供給形態については、原子力発電に替わる数10万kW級の大規模発電所から既存の送電網で供給するパターンと、各所に小規模発電所を整備して災害時にもエネルギー自給が可能なエリアを形成するパターンの融合形が最善と考えられるが、そのバランスは難しい。
 エネルギー自給可能なエリア形成については、太陽光やバイオマスなど、その地域特性に相応しい再生可能エネルギーの活用が重要であると考えられる。一方、大規模発電所については、出力が自然環境に左右されるとともに設備利用率が低く、発電能力に限界がある再生可能エネルギーは相応しくなく、原子力発電以外でいうと、今のところ火力発電に限られる。
 火力発電の燃料については、石油、石炭、天然ガスが考えられるが、それぞれ一長一短がある。コスト面を優先すると石炭であるが、二酸化炭素排出量など環境面を優先すると天然ガスになる。しかし、燃料調達価格や調達可能量の変動は先行きが読みづらく、一方、技術革新によって効率性が格段に向上する可能性もあり、一概にどの燃料が優れているか判断しにくい。ただ、現状の技術や燃料調達価格から、一定、どの程度の発電コストがかかるかは算定可能である。また、二酸化炭素排出量についても市場価値に置き換えることができるため、一応、貨幣というものさしで選択の判断をすることができる。
 一方で原子力発電については、安全・安心・人命など貨幣では換算しづらい要素が組み込まれ、しかも時間軸や空間軸も非常に複雑であるため、1つのものさしで是非を判断することができない。さらに、二酸化炭素25%削減という目標との兼ね合いも関わってくる。
 このような多様な判断基準について、正確な情報を把握・提供した上で、これからの電源について、国民的議論を促していくことが必要である。我々1人ひとりは、これからのわが国の生活や産業構造を大きく左右する重要な問題と認識して、積極的かつ冷静に議論に関わっていくことが重要である。

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