定期巡回サービスと地域包括ケアシステムへの波及

2012/04/26
経済・社会政策部 主任研究員 国府田 文則

 2012年4月からの第三次改正介護保険法の下で、地域包括ケアシステムづくりが本格的に始まった。今回の改正で最も注目されるサービスのひとつが定期巡回・随時対応型訪問介護看護(定期巡回・随時対応サービス)である。このサービスは、事業者の参入インセンティブの観点から、事業要件は当初予想されていたものよりかなり緩やかなものとなった。事業者の指定基準を例にとると、人員配置基準ではオペレーターが日中は随時訪問要員以外の職務と兼務することができ、また、夜間・深夜・早朝については複数事業所間で職務の兼務が可能となった。事業者は、訪問介護、夜間対応型訪問介護と本サービスあわせて3種類に訪問介護サービスのメニューを、対象者の状態や要望に応じて適宜選択的提供を行うことができることとなった。今後少なくとも当面は3つの訪問介護は存置される。したがって事業者は、当面は新サービスの顧客は数人からスタートするとしても、3つのサービスの利用者全体で事業所の事業収支バランスを確保できればよいことになった。
 本稿では、この新サービスの普及が各地の地域包括ケアシステム構築に及ぼす影響のうち、特にホームヘルパーやオペレーション機能に焦点を絞って指摘したい。まず、ホームヘルパー(以下「ヘルパー」)については、業務内容の専門性が一層求められてくるということである。新サービスへの従事経験を積み重ねたり、職場でのOJTを通して、ヘルパーの専門性は高まることが期待できるが、なお、「一部医療ケアの実施分担」、「看護や医療との連携」、「在宅看取りでの実施」、「認知症発症者の在宅生活継続を支援する」、「地域に住む高齢者の自宅生活から施設入所にわたる継続的な包括的な生活像の把握やアセスメント、生活支援サービス・介護・看護等サービスの提供の検討と計画立案」等に関して認識を深め、ノウハウ・ツールの修得等を進めることが必要となってくる。
 なお、従来からの登録型をはじめとする定型的な家事代行サービスや常勤ヘルパーの補完業務としての形態は、今後も必要勤務形態として存続するが、とりわけ上記のタイプのヘルパーの人材の質高度化をいかに図ることができるかは、事業者間の本事業の実施に関する力量格差に直結してくるだろう。その対応のためのヘルパー向け生涯学習機能の整備は、地域の公共サービスとして、就職情報提供や職業紹介・斡旋事業等と連携して各地域に整備されることがより相応しい。
 新サービスが各地の地域包括ケアシステム構築に及ぼす影響について、第二に指摘したい点は、オペレーションサービスについてである。今回の介護保険法改正における新サービス導入では、オペレーションセンターの設置は事業者指定基準の設備基準では必置要件として求められておらず、地域を巡回しながら適切に随時のコールに対応する形態も可能であるとされた。しかし今後を展望すると、大災害時の体制構築上の公共インフラとしても期待できることから、現在既に各地域に100か所以上整備されているオペレーションセンターを、地域包括支援システムおよび日常および災害時の要支援者見守りや救済のための地域資源として有効活用する方策を一層検討すべきである(中央区や札幌市では既に2010年度からこの視点から、地域の在宅高齢者等向けのサービスを開始している)。
 なお、既に各地域の地域包括支援センターの保健師や看護師等が、全国一律ではないものの、地域の生活機能のハイリスクの高齢者や要支援や要介護の高齢者からの随時連絡に対応し訪問したり、他の専門機関に繋いで対応を要請する等の取り組みが地域の実情に即して始められているが、24時間365日の対応体制が構築されているとはいえない。
 また、在宅高齢者の安心・安全感を確保するため、要介護度に関わりなく在宅慢性疾患患者の救急車出動要請のコール対応サービスとして、「緊急通報サービス」が自治体福祉サービスとして実施されているものの、救急車出動と医療機関搬送が必要な本人状態の場合にのみ活用されるサービスとなっている。
 救急車サービスの効率的かつ適正な運用を推進する上でも、介護・看護・医療面の対応を包括的に含む随時対応のオペレーションシステムが求められている。「わが地域に地域包括ケアシステムを構築する」という観点から、地域の実情に応じた「緊急通報サービス」のオペレーションセンターと当サービスや夜間対応型訪問介護のオペレーションセンターとの統合と再構築(「リストラ」ではなく「リエンジニアリング」)等の検討とが必要な時期を迎えている。
 近年続発している在宅高齢者その他住民の孤立死事件を契機に、住民と専門機関、一般事業者、行政等の協働による見守りネットワーク構築の必要性が叫ばれている。在宅の要介護の高齢者層のみならず、その他の地域に住む健康や介護のリスクを有している高齢者(一時的含め)等住民の安全確認と随時対応サービスを行うことを通して、当サービスのオペレーションセンター機能を「高齢者の見守り」の地域資源として有効活用することが可能である。今年度から、各種の生活支援・介護予防事業の推進に向けた支援策が国からも打ち出される。各地域での自治体(介護保険保険者)、事業者、住民、専門職一体となった積極的な企画・検討と事業化に向けた取組みが期待される。

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