消費者志向の新たな住宅供給システムについて

2012/05/02
研究開発第1部(大阪) 主任研究員 藤原 誠二

戸建のマイホームの購入を検討された方の中には建築条件付き宅地分譲制度に苦々しい思いをされた方も少なくないだろう。同制度では、建築工事請負契約を締結する相手が宅地の売買契約書で定められた相手に限られるため、住宅購入者からみると土地と上物の抱き合わせ販売のような制度ではないかという印象が拭えない。独禁法に抵触しない条件があるとはいえ通常の注文住宅と比べるとはるかに設計の自由度は低く、多額の住宅ローンを抱えるのに何故なのかという思いは解消されないからである。
 建築条件付き宅地分譲制度は、住宅供給システム上の課題もある。同制度では、地権者に高い買取価格を提示した事業者が開発用地を取得できる可能性が高くなる。高値で土地を取得した事業者は、仕込み価格を宅地の販売価格に反映すると消費者の購入意欲が減退するため、どうしても上物で利益をあげようとする。設計や施工に時間をかけずに短期間で資金を回収したり、地盤改良や基礎工事など目に見えないところでいわゆる手抜き工事を誘発しかねず、結果的に住宅の耐久性を低めてしまう遠因とも指摘されている。
 こうした住宅供給システムを改善する方策として、事業者が住宅や住宅地の商品価値を土地の取得段階から競うような仕組みが導入できないだろうか。例えば、地権者の人的ネットワークに依らず広く事業者を公募し、単に土地の取得価格だけでなく、住宅や住宅地の付加価値の向上に知恵を絞った事業者が用地を取得できるような公募型事業者選定システムが導入できれば、建築条件付き宅地でも魅力的な住宅が供給される可能性が高くなる。
 ただし、こうした公募型の住宅供給システムが成立する前提として、地権者の利益の確保と行政による公的支援が必要である。地権者の最大の関心事は相続税対策であることが多いと考えられるが、残念ながら現在の法制度では自治体が実行できる解決策はない。そのため、相続税負担が直接的に軽減されないものの、開発コストの軽減や開発事業者の出口戦略を自治体が支援できれば、間接的に地権者のメリットにもつながる。例えば、開発事業者の公募・選定に合わせて自治体が開発許可や埋文調査の手続きの短縮化に配慮することや、補助制度を紹介することなどが考えられる。また、場合によっては、自治体が公共事業の代替地や建替用地等として宅地の一部を取得することも考えられる。
 一方、費用をかけて支援する自治体からみてもメリットがなければならない。魅力の高い良好な住宅や住宅地が形成されることにより、所得層の高い新たな住民の誘致につながり、固定資産税や住民税の増収が期待される。また、こうした良好な住宅地は、長期的にみた場合の資産価値の維持にもつながるため、行政の安定した固定資産税の税源涵養にも貢献する。また、良好な土地利用を誘導する過程において、総合計画や都市計画マスタープランとの整合性を確保できるというメリットもある。
 ただし、行政が支援するといっても、住宅開発のノウハウをもたない行政が直接地権者を支援することは困難である。まちづくりのコンサルタント派遣制度のように、住宅開発に精通した民間のコンサルタントを派遣したり、まちづくりノウハウを有する行政の外郭団体が支援することなどが有効と考えられる。派遣されるコンサルタントや職員は、地権者や行政と連携しながら、地権者だけでなく住宅購入者や行政がそれぞれ利益やメリットを得られる開発を誘導していくことが期待される。
 しかし、コンサルタント派遣の経費が大きいとシステムとして有効に機能しない。建設会社や不動産会社に長年勤めリタイアしたシニアが有するノウハウと知恵をうまく活用することが有効であろう。わが街に魅力的な住宅地ができることに貢献したいと思う建設・不動産系のOBは少なくないと考えられる。
 こうした公募型の住宅供給システムは、地権者、民間事業者、行政のパートナシップによる新たな官民連携(PPP)によるまちづくりとも言える。一般市民の満足度が高い身近な分野からPPPを推進していくことが有効ではないだろうか。

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