自治体と地域の健康サービス産業の連携

2012/05/22
研究開発部(名古屋) 主任研究員 長尾 尚訓

高齢化が進展する中で、自治体では市民の健康づくりがますます重要な課題となっている。自治体は保健福祉行政の充実を図っているが、さらに効果を高めるためには、自治体だけではなく地域全体に広げていくことが期待される。以下に、自治体と地域の健康サービス産業の連携による取り組みについて提案したい。

健康増進における地域健康サービス産業への期待

メタボや介護を防止するためには、食事と運動を適切に管理することが重要であるが、多くの市民は食事と運動の重要性を理解しているものの、ついつい食べ過ぎたり、運動が億劫になり、健康を損なってしまうというのが現状であろう。自治体では健康福祉部門が健診、指導、啓発等の事業を実施して、予防に取り組んでいるものの、効果が不十分な自治体が多いと推測される。
 一方、任天堂のWii Fit、フィットネスクラブ「Curves」、丸の内タニタ食堂等、健康サービス事業に関するヒット商品が生まれている。これらは、従来の忍耐を強いる運動や、質・量等で満足できない食事ではなく、楽しみや美しさなどを感じさせる工夫により、健康ビジネスとして成功させている。民間企業は顧客を満足させる力を有しており、自治体の健康増進事業と地域の健康サービス産業が上手く連携することで、相乗効果を発揮することが期待される。

自治体と地域の企業が連携する仕組み

連携するためには、「市民を健康にする」という目的を共有する自治体と地域の健康サービス産業(飲食、フィットネス等)が協議会等の組織をつくり、一定のルールのもとで事業者が魅力的でかつ科学的根拠をもつ健康サービスを市民に提供できる体制をつくることが必要となる。その上で、自治体が健診、指導、啓発事業などの機会を活用して、健康づくりに関心をもつ市民に対して事業者の健康サービスを紹介する。それによって、市民は自分が求める健康サービスをどの事業者が提供しているかを見つけることができ、事業者は健康サービスのマーケティングが可能となる。さらに、地域の健康ポイントシステムをつくり、ポイント還元などを行うことで誘客して顧客化する。健康ポイントに応じて自治体の運動施設等の利用券や協議会参加事業者の食事券等をプレゼントしたり、メールなどで継続的に情報提供することにより、リピート利用を増やすことが可能となる。この健康ポイントシステムは電子マネーの情報インフラを活用することで比較的容易に導入、運用できる。

自治体における取り組みの提案

自治体の保健福祉部門と地域の健康サービス産業がこのような形で連携する仕組みをつくることで、市民の健康増進、医療・介護等財政負担の軽減、健康サービス産業の創出を同時に実現することが可能と考えられる。主体となる地域の飲食店、フィットネス、商店等の事業者が健康マーケットの開拓に意欲的な地域では実現できると考えられ、健康づくりに注力する自治体において検討することを期待したい。

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