持続的発展を遂げる企業の経営戦略とは(3)

2012/10/01
経済・社会政策部 主任研究員 齋藤 禎

 前々稿『持続的発展を遂げる企業の経営戦略とは(1)』で、「持続発展を遂げる企業の経営戦略」として、自立した個が、地下茎のように張り巡らした(すなわち、形式的な組織や表面上の組織体ではない)社内外の経営資源のネットワークを最大限に活用しながら「自己組織的なチーム」を柔軟に組成し、ストーリーをつくり上げていくことが一層求められるのではないだろうか。ありがちな個人対組織のような単純な図式ではない、変革期の今、「第三の形態」についてあらゆる可能性を探ることが重要である」と問題意識を投げかけた。

 その後も、持続的発展を遂げる企業の経営戦略について日々考え続ける中、先日、社内学会で、ある社会起業家の方からお話を伺う機会があり、事業の成功の秘訣についてお尋ねをすることになった。近年、国内外の「人材輩出企業」と称される企業は、社内外の敷居が低く、人材に一定の流動性があり、OB・OG等の卒業生ネットワークを幅広い業界に張り巡らせ、ビジネスプランを磨き上げたり、新たな事業を連鎖的に創出しているが、彼もこれまでに所属した企業や組織の人脈やネットワークを上手く活用することで成功しているに違いないと決めつけていた。
 弊社も各界で活躍する人材輩出企業としての自負があって、社内外のネットワークの有用性について尋ねたわけだが、答えは単純なイエスではなかった。ネットワークの活用というと他力本願になるので、自身は、あくまで自力本願でいきたい。ネットワークとは、思いがけない果実を得ようと関わっていく要素もあるだろうが、自らを起点にして周囲に働きかけ、身近なところから即興的な連鎖反応が生まれてくることを慈しみ、育んでいくものであるということに改めて気づかされたのである。
 我が国の企業による連携やネットワーク戦略についても同様のことが言える。単なる情報収集や何となく関わっておこうというレベルのネットワークからは、大きなうねりは生まれてこない。企業同士の連携やネットワーク活動がなかなか上手くいかないのは、どこか自社のことは棚上げし、他力本願で何となく得られそうな果実だけをもぎ取ろうという姿勢にあるのだろう。
 その意味で、以前から厳しい競争が繰り広げられるアジア等の舞台で活躍している「和僑」(注1)という方々のネットワークの張り方には注目をしている。華僑、印橋ならぬ彼らに取材をすると、自立した強い個を起点としながら、国内外に広がった互恵的なネットワークに驚かされる。日本を飛びこえ、海外の大学等へ進学したり、海外で直接起業する学生や若者も増える中、世界やアジアを舞台に戦う際に、心のより所となるネットワークや居場所、次なる変革・イノベーションを紡ぐ「第三の場や形態」が自然発生的に生まれているのだ。これは、中国だけでなく、成長著しいインド等のその他の新興国でも同様であり、現地市場の開拓に奔走している「和僑」にも出会うようになった。
 また、近年、国内においても、大企業の若手・中堅社員が自らの専門性や知識・ノウハウ等をボランタリーに提供する、いわゆるプロボノ型で企業経営に対する助言や支援に積極的に乗り出したり、企業のOB・OG等がグレーヘアーやメンターとして起業家等を後押しするなど、個を起点とした新たな「ヒトの交わり」が次々と生まれている状況にある。
 さらに、アジア大でのスタートアップ等の資金調達網の広がりに加え、志の高い起業家や事業などに対して、単なる資金ではなく、個の志や変革への思いを凝縮した「志金」へとカネの流れも変わり始めている(注2)
 今後は、こうした強い個を起点としたネットワーク等の「第三の場や形態」を見出しながら、新たな人の交わりや志金等を経営戦略に柔軟に組み込んだ企業こそが、持続的発展を遂げると考えられる。

 

(注1)「和僑」の動向は以下のリンク等も参照にされたい。例:上海和僑会 http://sh-wakyo.com/ (注2)参考:ソーシャルファイナンスセミナー http://www.pref.mie.lg.jp/TOPICS/201201021720.pdf
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