地域公共交通におけるタクシーの活用について

2012/10/22
研究開発部(名古屋) 主任研究員 筒井 康史

 地方自治体におけるコミュニティバス事業の取組みが進められているが、地方部ではバス車両を活用した定時定路線型の運行方式ではなく、タクシー車両を活用し予約制でルートを決めずに運行する「デマンド型乗合タクシー」事業が最近注目されている。ただし、安易に導入されているケースも散見されるため、本稿では、地域公共交通における「タクシー」の位置づけを再確認しながら、導入時の留意点等について筆者の考えを言及したい。

 ■問題認識:タクシーが営業していない空白エリアが発生している

 全国の交通機関別輸送人員の推移を見ると、タクシーやバスによる輸送人員は、昭和45年頃をピークに一貫して減少しており、現在は、ピーク時の半数以下となっている。自己都合で利用できる自家用車が普及している一方で、公共交通手段は、時間に正確な鉄道が少しずつ輸送量を増やしているが、バスやタクシーの減少までカバーしていない。
 タクシーに限ってみると、タクシー新法(特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適性化及び活性化に関する特別措置法:平成21年10月施行)により、特定地域におけるタクシー事業の新規参入要件が厳格化され需給調整が行われているが、需要の集中した都市部のみの対策で、地方部においては、ほとんどのタクシー事業者おいて運賃収入等が伸び悩み疲弊している状況にある。
 特に、一部過疎地域では、既に営業する事業者がいない、タクシー空白エリアが存在する地域も現れている。

 ■最近注目されている「デマンド型交通」として「タクシー」の活用が増えてきた

 地方の地域公共交通の取組として、自治体によるコミュニティバス事業が積極的に行われるようになった。これは、道路運送法の改正により、バス事業の需給調整規制が緩和されることで、需要が乏しく事業採算性の悪いエリアでは民間バス路線の廃止・撤退が進み、地方自治体が代替してコミュニティバスを運行せざるを得なくなったことによる。
 最近では、地方自治体が代替して事業化する際に、単に定時定路線のバスを運行するのではなく、需要規模に応じて、予約制でルートを決めずタクシー車両を活用した「デマンド型乗合タクシー」事業が選択されるケースが増えてきた。定時定路線のバスよりも、カバーできる範囲が広く、事業費が安いということで選択されている。

■デマンド型乗合タクシー事業の導入における留意点

 下記に、地域構造と運行方式の関係について整理した。デマンド型交通は、ダイヤやルートの設定等によりタイプ分類されるが、人口分布等の地域状況に応じて、適切な運行方式を選択することが望まれる。
 デマンド型乗合タクシーは、既存のタクシー事業者に運行を発注する委託事業として行われるケースが多いが、利用者像の設定、事業スキームや委託先の選定方法等を間違えると、通常のタクシーを利用するお客を奪い、タクシー事業者の事業環境をさらに悪化させることになる。
 民間のバス事業者が撤退してもタクシー事業者がカバーするが、タクシー事業者までも撤退してしまったら、夜間や緊急時、病院への移動時など、安心して生活するための最低限の交通手段が無くなってしまう。冒頭で記述したように、タクシー空白エリアは既に存在しており、少子高齢化・人口減少が進展すれば、さらに状況は悪化する。
 地方自治体と民間交通事業者との間で、地域公共交通の共通した将来像やそれぞれの守備範囲について合意形成がなされ、適切な事業分担がなされることが望まれる。持続可能な地域公共交通の確保は、官民が勝手なことをしていては成立しない。

 ○地域公共交通の地域構造と運行方式の関係(タイプ分類)

 

前のページへもどる

ページの先頭へ

1234567890