食農産業の「安定供給」に係る2つの方向性

2012/11/07
公共経営・地域政策部 ふるさとの豊かな暮らし創発グループ

特定の産業集積や企業立地がみられない地方部において、主な地域資源である農林水産物を活用した取組は、地域経済の活性化のための拠り所となっている。また、6次産業化を含む農林水産業(以降、食農産業とする)は、本年7月に政府が発表した「日本再生戦略」において、日本再生のための4大プロジェクトのひとつとして位置づけられるなど、地域経済の再生のみならず我が国経済を支える産業としても期待されている。

このように食農産業への期待が高まりをみせる一方で、高齢化・人口減少等に伴う後継者不足や耕作放棄地の拡大は、当該産業において依然として深刻な問題となっている。国による農商工連携や6次産業化等の推進により、全国各地で地域資源(農林水産物)を活用した食品開発等が行われている。しかし、これらは単品・小規模な取組が多く、地域経済に大きく貢献するような事例は決して多くない。また、高齢化・人口減少の加速化によって規模的拡大が期待できず、既に飽和状態にあると言える国内食市場の中に、こうした単品・小規模な商品を投入したところで、それがいくら良質であっても訴求力・競争力に欠け市場浸透は期待できない。

以上のような状況の中、今後の食農産業による地域活性化の実現には、「消費市場への安定供給」を基軸とした2つの方向性があると考えられる。

ひとつは、一定地域内で関連企業・団体が連携し、個々の商品は少量であるが年間を通じて多品種を安定的に供給できる点を付加価値とした産地育成である。これは個食化が進み、あらゆるモノに自分らしさを追求する今の消費者ニーズに対応した生産・流通システムの構築である。その実現には、地域においてマーケティング機能を強化して企画力を高めることはもとより、生産者や製造者を繋ぐ自治体や関係機関等のコーディネータとしての役割、消費市場における販売チャネルや流通関係者等とネットワークを有するプロモーターの育成・確保などが重要なポイントになる。

もうひとつは、生産規模の大型化・集約化により、国内の大消費地だけでなく海外市場への参入も視野に入れ、生産力及び価格の双方で競争力がある量産を付加価値とした大産地の形成である。この場合、年間数回の収穫が可能な葉物類、国内自給率の低い農林水産物等、国内に大産地がない農作物等の生産及び加工を通じて国内市場における競争力を高めることや、現在の主たる消費層である富裕層だけでなく中間層への浸透による海外市場の規模拡大も期待される。また、今後更なる耕作放棄地の拡大が危惧される条件不利地域や大きな被害を受けた被災地等が有力な候補地として考えられ、こうした地域における農地等の有効な活用・再生手段にもなりうる。このような大産地形成の実現のためには、大規模農業生産法人どうしの合併を含む事業主体(生産者)の育成・確保、大量な商品を取り扱える販売先の確保・連携等が課題になる他、とりわけ農地の所有や集約に係る制度上制約等も大きな障壁となる。

どちらの方向性を選択するかは、地域の地理的条件、生産規模や生産品種、耕作放棄地や後継者の状況等によって異なる。これら2つの方向性は、何れも関係者間のコンセンス形成や連携等が必要で比較的時間を要すると考えられるため、なるべく早期に地域としてのビジョンを明確化することが望まれる。

本件に関するお問い合わせ

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
公共経営・地域政策部 ふるさとの豊かな暮らし創発グループ
福塚 祐子
TEL:03-6733-1022

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