地方自治法改正後の市区町村総合計画の最新動向

2013/01/25
公共経営・地域政策部 主任研究員 大塚 敬

1.市区町村総合計画に係る地方自治法改正の概要

我が国のほとんどの市区町村は、行政運営全般を対象とした最上位の計画として、一般に総合計画と言われる計画を策定している。総合計画は、行政運営全般の基本的な理念や大方針を示す「基本構想」、基本構想にそって行う各分野における施策を示す「基本計画」、基本計画にそって実施する具体的な事業を示す「実施計画」など、階層化された複数の計画により構成されることが多い。

市区町村においては、かつて、地方自治法により、総合計画の最上位に位置づけられる「基本構想」の策定が義務づけられていた。しかし、地方自治法の一部を改正する法律(平成23年法律第35号)が平成23年8月1日に施行され、この規定が廃止された。

2.法改正後の総合計画の最新動向

この法改正は、地域主権改革における国から地方への「義務づけ・枠付けの見直し」の一環として行われたものである。したがって、当然のことながら市区町村において基本構想や総合計画がその役割を終えたということではなく、基本構想及びこれを含む総合計画全体についても、市区町村の自主性の尊重と創意工夫の発揮を期待する観点から措置されたと捉えるのが適切である。

改正前の地方自治法で規定されていたのは、基本構想を議会の議決を経て策定することのみであり、総合計画の計画構成や各計画の内容などについては、法改正以前から、各市区町村が自由に決定することが可能であった。しかし、1969年の地方自治法改正で基本構想策定の義務づけを位置づけた際に、別途当時の自治省が設置した研究会報告という形で、基本構想を頂点とする総合計画の計画構成やその内容等のモデルが提示されたため、今般の法改正前まではこのモデルを踏襲した構成、内容の総合計画が非常に多かった。

法改正後、一年を経過した今、こうした過去の経緯にとらわれることなく、総合計画に独自の工夫を導入する例が見られはじめている。たとえば、基本構想-基本計画-実施計画という最も一般的な三層の計画構成に対し、二層以下に簡素化する事例は神奈川県の横浜市、川崎市、東京都の武蔵野市、文京区、江東区など既に多くの事例が見られ、特に武蔵野市では、法改正前は策定が義務づけられていた基本構想を策定せず、長期計画を最上位とする計画を策定している。

3.今後の方向性、可能性

一定以上の業務規模と社会的責任を有する組織が、業務を計画的に行うために業務全体を対象とした何らかの計画を策定することは、市区町村に限らず不可欠と言える。その意味では、地方自治法改正により義務づけがなくなったからといって総合計画に類する計画を一切策定しない市区町村が出てくる可能性はまずない。

しかし、今後は地域の実情に応じて総合計画が多様化すると考えられる。例えば、従来の体系的、網羅的な施策ではなく優先的、重点的に実施する施策・事業だけを示す計画、首長の任期と連動させた計画、住民の理解・共有を優先した簡潔な内容で携帯性の高い冊子の計画など、既に一部の市区町村で個性的な計画の事例が見られるが、今後はこうした例が珍しく無くなるかもしれない。もともと、人口数千人の村と数百万人の政令指定都市では、望ましい総合計画のあり方は異なって然るべきである。このため、従来の総合計画とは計画の構成や形式、内容などが大きく異なる計画が増加すると考えられる。

◇自治体経営改革に関する情報をご提供するページを開設しています。http://www.murc.jp/corporate/virtual/ipm
◇地方創生に関する情報をご提供するページを開設しています。http://www.murc.jp/sp/1507/sousei/index.html

前のページへもどる

ページの先頭へ

1234567890