試される再生エネルギー市民ファンドの底力

2013/03/19
永柳 宏

近年、再生エネルギー利活用プロジェクトに対する市民ファンド(匿名組合契約など)が注目されている。平成24年7月に固定価格買取制度が開始されたことにより、安定して2%以上の配当が出せるようになったことが、国民、事業者の双方に、市民ファンドを意識させる背景になっている。しかし一方で、市民ファンドが「金融商品化」する傾向もあり、今、市民ファンドの役割再考が求められている。

市民ファンドは、第二次大戦前まで、全国各所にて行われていた互助金融の形態である「頼母子講」の現代版とも言えるものであるが、再生エネルギー事業資金を市民から調達する先進的取組みが登場したのは12年程前であり実績としては新しい。当時、まだ採算性が低い風力発電や太陽光発電の実現を目指す事業者が、市民出資の「匿名組合契約」にて資金調達を行ったのがはじまりである。

固定価格買取制度以前は、再生エネルギー発電事業の経済的自立は困難な状況であり、市民ファンドは、国・自治体の補助金を補完する役割を果たしてきた。社会性は高いものの経済的に成立しない事業を、市民が支えるといった「志」のもと、多くの出資者を集めた。また、社会情勢も追い風として手伝った。藤井良広著「金融NPO」(岩波新書)では、デフレ対策のゼロ金利政策によって、市民の「金利感覚の低下」があったこと、また、退職後の団塊世代の社会参加意識と同期し「団塊世代も担い手」になったことを追い風要因にあげている。

3.11移行、再生エネルギーの普及に対する国民意識の高まりはさらに大きなものとなっているが、固定価格買取制度が導入され、事業者は、市民ファンドに頼らなくとも市中銀行やファンドから資金調達が可能となっている。また、市民自らも無理なく太陽光発電を設置できる環境になった。市民ファンドは、再生エネルギー普及の旗頭的事業へ参加したい「市民の志の表意」であったが、固定価格買取制度によって、こうした「志」への変化が予想される。加えて注意したいことは、平成25年度以降、株価や金利の上昇が見込まれることだ。「金利感覚が低下」した富裕層が市民ファンドの担い手であったとすれば、これら出資者が、金融環境の変化によって市民ファンドへの関心を低下させることはないだろか。また固定価格買取制度は、国主導の制度であるため、事業を支える慈善的意識を低下させないだろうか。固定価格買取制度の導入、株価・金利上昇局面は、市民ファンドの「向かい風」の要素になる可能性がある。

平成25年1月27日に閣議決定された平成25年度予算のポイントをみると、地方交付税は6.8%の削減で地方自治体予算は益々縮減されており、市民ファンドに対する役割は、再生エネルギー分野以外にも大きなものになっている。今後の社会的事業に対して市民ファンドの出資を広げるためには、配当以外に、出資者にどのような社会的メリットがあるかを「見える化」することが大きな課題である。固定価格買取制度を前提とした太陽光普及と配当だけの訴えでは従来のような出資者の広がりは期待できない。地元の雇用創出、地域産業と一体となった資金循環の仕組みなど、新たな社会的メリットの地域還元について、市民ファンドの提案力が求められている。

再生エネルギー市民ファンドの地域還元の事例

(1)配当の数パーセントを地元産業振興に充当
   事例:○合志市(熊本県)と熊本製粉

(2)地元産業の育成
   事例:○おひさまファンド(飯田市)⇒地元企業の育成、ESCO事業との組み合わせ
       ○ほうとくエネルギー(小田原市)⇒地元企業の育成

(3)生協・JA等の地元団体が発電会社を設立
   事例:○JA(三菱商事と提携)
       ○生協;グリーンコープ共同体(福岡市)

(4)特産品等での還元
   事例:○環境維新ファンド さつま自然エネルギー(いちき串木野市;鹿児島県)
       ⇒現金と焼酎等で分配 ※地元の浜田酒造が代表

(5)行政の環境政策に寄付
   事例:多摩市循環型エネルギー協議会
       ⇒収益の一部を、市の環境政策に寄付

※本論でいう「市民ファンド」は、直接金融型の匿名組合契約等を指すもので、間接金融型の市民バンクや寄付型の形態を指すものではありません。

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