災対法改正がもたらす被災者支援のあり方の変化

2013/11/11
公共経営・地域政策部 主任研究員 中井 浩司

1.東日本大震災での被災者支援の課題

平成23年3月11日に発生した東日本大震災は未曾有の大災害となり、住宅被害でみても全半壊が約40万棟(総務省消防庁「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)について(第148報)」による)に及んだ。住宅を失うなどの被害を受けた数多くの被災者には、仮設住宅の供給をはじめとする災害救助法に基づいたいわゆる「現物支給」による支援の他、被災者生活再建支援法による被災者生活再建支援金の支給をはじめ「罹災証明」に基づいて各種支援策が提供される。しかし、その膨大な被災者の発生を前に、生活の礎となる仮設住宅の供給遅れに加え、各種支援策の享受に必要な罹災証明書の発行が遅れるなどの問題が発生した。

2.災害対策法制等の改正

東日本大震災後、各種の災害対策が国・地方自治体で進められているが、その根幹となる災害対策基本法の改正は2段階にわけて進められた。まず、平成24年6月に「緊急を要するもの」について第1弾の改正が、次いで平成25年6月に第2弾の改正が行われた。第2弾の改正では、災害対策基本法の内容だけではなく、これまで厚生労働省であった災害救助法の所管省庁を内閣府に移管させている。
(末尾表参照)

3.被災者支援の観点から法制度の特徴と自治体の動き

被災者支援の観点から今回の災害対策基本法の改正を俯瞰すると、「市町村による罹災証明の発行を法律上位置づけたこと」と「被災者支援を行うための個人情報の利用を認めたこと」の2点が大きな特徴である。

これまで、罹災証明の位置づけや発行主体が法律上明確ではなかったことや、個人情報保護法等の制約から自治体が保有する様々な個人情報(世帯情報や所得に関する情報等)を災害時に利用できないことが、支援時の混乱や遅れ等の問題を引き起こしてきたことが指摘されてきた。

今回の法改正でこうした点がクリアされたことにより、各自治体は当面、罹災証明の発行や総合的な被災者支援を行うための台帳整備に向けた仕組みづくりに本格的に乗り出すことが求められる。既に東京都では、市区町村に対して、罹災証明や被災者支援に関するシステム導入の支援を検討するなどの取組がなされており、今後大規模災害が予想される地域を中心として、被災者支援の体制整備がより本格的に進むものと思われる。

4.今後の被災者支援のあり方に向けて

今回の法改正により、支援を行うための基盤となる罹災証明書の発行と被災者情報の整備について対応がひとまず完了した。しかし、先述の通り、当面こうした側面の対応が進むと思われるが、最も重要となる「どのような被災者支援を行うべきか」については、依然として明らかにできていない。

内閣府では、先般、「被災者に対する国の支援の在り方に関する研究会」を設置し、具体的な検討を開始したところであるが、住まいの再建はもちろんのこと、広く生活再建という観点から、被災者の就労や自立に向けて具体的にどのような支援を行うかを明確にすることが求められている。特に今後発生しうる大規模災害において、国による支援だけでは財政的・人的にも対応が困難であることが十分想定されることから、自治体の役割を明確にするとともに、さらに大幅に自助の役割を強めるような大胆な制度設計が必要となると考えられる。

《法改正の主な内容》


資料)内閣府資料より三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成

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