「割り箸」から日本の林業を考える

2014/06/02
環境・エネルギー部 研究員 小川 拓哉

林業の新規就労者を主人公にした映画「Wood Job!」の公開、再生可能エネルギーの固定価格買取制度開始に伴う全国各地での木質バイオマス発電の取組の広がりなど、国内の森林・林業への注目が高まっているが、林業産出額や林業所得の減少、林業労働者の減少・高齢化、流通構造の効率化が進まないなど、国内の森林・林業に関わる状況は依然として厳しい。

このような中、木材・木製品出荷金額の約1%の190億円程度(※1)の市場規模ではあるが、私たちの一番身近な割り箸を通して、日本での国産材の利用状況をみていく。

■割り箸利用の概況

2011年の国内の割り箸の消費量は約190億膳であり、1人当たり年間150膳程度の割り箸を利用している。割り箸の利用場面は約6~7割が飲食店・外食産業用、約2割が家庭用、約1~2割がコンビニ・持ち帰り弁当用であるといわれている。

割り箸利用は、使い捨てであることの利便性、衛生的であるといった理由により、1970年頃から拡大し、国内生産が追い付かずに輸入が開始された。その後、価格の低い輸入割り箸に押されて、国産割り箸製造業者の多くは撤退・縮小を余儀なくされた。我が国で利用される割り箸約98%が輸入であり、そのほとんどが中国産である。

図表 我が国の割り箸消費量の推移(輸入・国産別、単位:百万膳)及び輸入割合

注:輸入割り箸には、木製と竹製が含まれる。
出所:林野庁木材産業課業務資料、財務省「貿易統計」よりMURC作成

■洗い箸への転換の動き

このように外食産業で多く利用されてきていた割り箸であるが、2000年代後半からプラスチック製の洗い箸への転換が進み、2005年に250億膳以上の消費があった割り箸が2011年には約190億膳と約25%減少している。これは、「マイ箸運動」の展開や、オペレーションを含めたコスト面でも割り箸と遜色のない「洗い箸」が登場し、外食産業が「エコ」「環境配慮」をキーワードに「洗い箸」に転換したことが大きい。

売上上位の外食企業を対象に、割り箸・洗い箸の利用状況を調査したところ、洗い箸を使っている企業は売上高で37%のシェア(1兆9200億円)、店舗数で30%のシェア(2万600店舗)を占めており、少なくとも全体の3割以上の外食企業が洗い箸を利用している。

図表 売上上位の外食産業に占める洗い箸の割合

※外食産業資料集2012年版(食の安全・安心財団)に掲載された売上上位250社のうち、箸を利用していない企業を除いた215社について、箸の利用状況をインターネットで整理(2013年時点)

■割り箸と洗い箸の比較分析

「エコ」「環境配慮」をキーワードにして、導入が進んでいる洗い箸であるが、割り箸との定量的な比較をしているものは少ない。 ここでは、2014年第9回日本LCA学会研究発表会で筆者も報告者の一人として報告した結果(※2)を紹介したい。

※試算の条件等の詳細については、リンク先の要旨を参照されたい。

現在、外食産業で多く利用されている中国産割り箸は、国産割り箸、洗い箸と比較して、多くのCO2を排出している。これに対して、国産割り箸と洗い箸には大きな差はない。

環境負荷の視点でみると、中国産割り箸から洗い箸への転換は確かに「エコ」といえるが、国産割り箸の利用は必ずしも環境に悪いとは言い切れない。

図表 中国産割り箸、国産割り箸、洗い箸の比較結果(仮想店舗で1年間使用)

※1日1,000膳の箸を使用する仮想店舗での年間のCO2排出量を、原料調達から箸の加工・流通、廃棄まで含めて試算。洗い箸には
 使用時の洗浄工程も含める。
※中国産割り箸の原料調達工程は、ロシア・モンゴルなどの伐採現場から製造工場までの原木の輸送の際の負荷、伐採後に樹木が
 植林されないことにより炭素放出が大きいため、排出量が多くなっている。
※試算の条件により数値は変わる可能性があり、一般的な「割り箸」「洗い箸」に適用できるとは限らないことに留意が必要である。
出所:「割り箸と洗い箸のライフサイクルCO2比較分析」朝倉・小川 , 2014 , 第9回日本LCA学会研究発表会講演要旨集 より作成
    国産割り箸の値は同報告の「回収なし」の値を用いている。

■国内林業振興に向けて

このように身近な「木材」である割り箸は、国産から中国産への転換、そして洗い箸への転換が起こっている。

割り箸という一製品を通しても、国産材割り箸の生産量は101,800万膳(1999年)から39,500万膳(2011年)へと半分以下となっており、日本の林業のおかれる厳しい状況が分かる。一方で、福島県の磐城高箸(※3)や岡山県・岐阜県の工場で生産を行っているワリバシカンパニー(※4)といった企業が新たに国産材の製箸事業に参入する事例も見られ、45,100万膳(2006年)、44,700万膳(2007年)、52,000万膳(2008年)、53,000万膳(2009年)、46,600万膳(2010年)と割り箸の需要量全体が減少する中で横ばい傾向にある。

国内林業が注目を集める中で、日本全体の木材需要量としては微々たるものである割り箸であるが、国産材利用の在り方を身近に考えるきっかけとなり、日本国内での割り箸以外の国産材のさらなる需要拡大につながることを期待したい。

また、これまでは、国内の林業者・木材産業関連事業者が、原木市場や製材市場、工務店などに向けたBtoBのビジネスしか携わっておらず、プロダクトアウトの視点に偏っていたことが課題である。一例ではあるが、「割り箸」という消費者にとって身近で関わりやすい製品の製造事業に取り組むことをきっかけに、新しい発想やマーケットインの視点を持つことが、今後の林業・木材産業に振興に必要なことと考えている。

参考文献
「割り箸から見た環境問題2006」環境三四郎2006 オンライン http://www.sanshiro.ne.jp/reference/index.htm
「割り箸はもったいない?」田中淳夫 2007 ちくま新書

(※1)平成22年度工業統計表の出荷額及び2010年の貿易統計の輸入金額を足した金額
(※2)「割り箸と洗い箸のライフサイクルCO2比較分析」朝倉・小川 , 2014 , 第9回日本LCA学会研究発表会講演要旨集
http://ilcaj.sntt.or.jp/meeting/files/9thmeeting_proceedings_body.pdf
(※3)http://iwaki-takahashi.biz/index.html
(※4)http://warebashi.com/
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