地方自治体でのクラウドファンディングの利用:意義と効果-総論

2014/07/07
公共経営・地域政策部 副主任研究員 中田 雄介
マーケット調査室 コンサルタント 渡邉 睦
経済・社会政策部 研究員 北 洋祐
公共経営・地域政策部 主任研究員 大塚 敬
環境・エネルギー部 副主任研究員 水谷 衣里

今日、クラウドファンディングは、起業を目指す人々や社会活動の担い手による活動資金の獲得を目的とした利用だけでなく、地方自治体などの公的機関にも利用の拡大がみられる。本稿では、新たな潮流としてのクラウドファンディングが、産業振興を中心とした地域活性化にむけた活動資金の調達手法として活用されつつあることを踏まえ、地方自治体がクラウドファンディングを利用・導入する意義や効果を整理する【総論】とともに、今後、この新たな仕組みを地方自治体が導入するにあたり、どのような検討を行うことが必要か、論点整理を行うこととしたい【実践編】

■クラウドファンディングとは?

クラウドファンディングの基本的な事業モデルは、市場に存在する資金提供側の「個人(投資家)」と、事業を実施するために資金調達が必要な「法人もしくは個人」を、仲介業者(プラットフォーム運営事業者)がインターネット上に構築したプラットフォームを介して結びつけることにより成立している。

まず、資金調達側は資金が必要な事業について、プラットフォームを介して資金提供側へ告知を行い、これを受け資金提供主体は事業への賛同、または投資メリットを感じた場合に、各自が出すことができる金額を提供する。なお、資金提供側のメリットは、利回りといった金銭的なリターンをはじめ、事業に関連したリワード(製品・サービス)の享受と多様であり、後述するクラウドファンディングの類型により異なる。また、仲介業者は、調達金額に応じた手数料を取ることで収益を得ている。

こうしたクラウドファンディングの基本思想は、「クラウド(Crowd=不特定多数の大衆)」から「ファンディング(Funding=資金調達)」することにある。また、クラウドファンディングのプラットフォームの成功には、「魅力的な資金調達案件」と「意欲的な資金提供者」が集まっていることが前提とされる。そして、これを実現するため、各仲介業者にはデザイン・操作性の優れたプラットフォームの構築、多数の資金提供者が関心を持てるような告知方法やリターンの見せ方、資金提供側と資金調達側の双方向コミュニケーション機能等に関する運営スキル、ノウハウが求められている。

図表 クラウドファンディングの事業モデル
図表 クラウドファンディングの事業モデル

■世界的に盛り上がりをみせるクラウドファンディング

民間金融機関や機関投資家ではなく、不特定多数の大衆から事業活動に要する資金を調達するクラウドファンディングの仕組みは、直近2~3年で急拡大しており、正確な市場規模の予測は難しいものの、海外の調査機関によるレポートでは、2012年には全世界で2,660百万ドルがクラウドファンディングの仕組みを通じて調達されたと推定されている。

図表 クラウドファンディングを通じた全世界の資金調達規模
図表 クラウドファンディングを通じた全世界の資金調達規模
出典)山本純子(2014)『入門クラウドファンディング』 株)日本実業出版社 (原典. massolution (2013) The Crowdfunding Industry Report)

■クラウドファンディングの機能・特徴

クラウドファンディングは、リターン(リワード・利回り)の方法によって、「寄付型」「購入型」「貸付型」「投資型」「株式型」といった類型に分類することができ、それぞれ特徴をもった資金調達の形態として認知されている。

図表 クラウドファンディングの類型と国内の事例
図表 クラウドファンディングの類型と国内の事例

「寄付型」クラウドファンディングとは・・・

○資金提供者へのリターンが発生しない形で、資金調達が行われるもの。

○寄付型のクラウドファンディングには、社会性の高い分野のプロジェクトが多く、近年は、被災地支援関連に多く利用例がみられる。

○これまで社会性の高い分野での活動(例:NPOなどの非営利団体の活動)では、団体の賛助会員のロイヤリティを高めることで寄付(ファンドレイジング)を募ってきた。共感性が高いテーマであれば、それぞれの金額は少額であっても、多くの賛同者(資金提供者)を集めることを可能にしたクラウドファンディングは、会員制/囲い込みにより資金調達を行ってきた同領域において、広く多くの人の共感を得ることで小口の資金提供を募ることを可能にした。

「購入型」クラウドファンディングとは・・・

○資金提供者へのリターンを、事業に関連したモノ(製品)やサービスで還元するもの。(資金提供者は、金銭以外の形でリターンを得るもの)

○国内では、「購入型」のクラウドファンディングは仲介業者の数、調達金額ともに増加が顕著であり、一般の認知が最も進んでいる。

○「購入型」のクラウドファンディングは、仲介業者が扱う案件(プラットフォーム上で告知される案件)により、「総合型」と「特化型」に分けて理解されることが多い。「総合型」は、扱う案件の内容に決まったテーマは設定されておらず、モノづくりからサービス系のソフトなテーマまで扱っている。一方、「特化型」は、扱う案件のテーマを設定しており、モノづくり、出版、スポーツ、アートといった分野にそれぞれ特化している。

「貸付型」クラウドファンディングとは・・・

○個人間融資と捉えることができ、資金提供者は、提供した元本と利子をリターンとして受け取るもの。一般に、「ソーシャルレンディング」と呼ばれている。

○国内では、maneo、Aqush、SBIの3社が仲介業者として参入している

○「貸付型」では、仲介業者は資金調達案件別に匿名組合(ファンド)を組成し、資金提供者からの出資を集める方法を採っている。なお、仕組み上、貸し倒れのリスクが存在することから、資金提供者にはリスクを理解した上での利用が求められている。仲介業者各社は、貸し倒れ率を引き下げるために、案件化の段階で、一定の基準を設ける等との工夫を講じていると考えられる。

「投資型」クラウドファンディングとは・・・

○資金提供者へのリターンを、事業の利益に応じた配分として還元するもの。

○中小企業に対する資金提供、不動産事業者の不動産購入に関する資金提供、海外のマイクロファイナンス事業に対する資金提供など、一定の運用利回りを前提としたプロジェクトへの投資が対象となる。

○具体的な事業内容や資金調達の背景を開示している場合もあり、環境に配慮した商品・サービスや地域活性化に繋がる事業といった面に、資金提供者の共感を得ることで、投資促進に結び付ける手法が取り入れられている。

「株式型」クラウドファンディングとは・・・

○「投資型」の派生。「投資型」と同様に、資金提供者は、事業の利益に応じた配分をリターンとするものの、金銭ではなく、株式購入の形で資金調達を行う点に特徴がある。

○「株式型」は、未公開株を誰でも株式形式で購入できるクラウドファンディングとして、欧米を中心に実用化が段階にある。日本では、2014年5月に改正金融商品取引法が成立し、2015年の施行後、国内でも「株式型」のクラウドファンディングが実施可能になった。

 

一般に、クラウドファンディングが有する機能・特徴は、資金調達の面にあると考えられがちだが、クラウドファンディングの特徴は、必ずしもこれに限るものではない。

新しく事業を手掛けたいと考える事業主体にとって、クラウドファンディングが資金調達の仕組みとしてのみ利用されることは稀である。そのため、クラウドファンディングが有する機能・特徴については、「商品・サービス開発」「マーケティング・プロモーション」「資金調達」の機能・特徴を併せもつ複合的なものとして、捉えることが適切であろう。

また、海外では「Quirky」をはじめ、大衆からアイデアを募集しそれを磨き上げ、製品として開発し、受注販売(購入型クラウドファンディングに類似)を行うクラウドファンディングとクラウドソーシングの中間領域に位置するサービスが急成長している。こうしたプラットフォームは国内でも台頭しつつあるが(「CUUSOO」「wemake」など)、一般大衆が製品アイデアを提案するという行為は、寄付型/購入型のクラウドファンディングに比べ参加のハードルが高いことから、現時点でまだ定着するには至っていない。

ただし、事業者等を対象に、特定テーマに関する製品アイデアの募集や技術とデザインのマッチング等、行政主導によるクラウドソーシングに近い仕組みは既に国内でも導入されており、今後、海外とは異なる形態で、クラウドファンディングとクラウドソーシングの中間領域の市場が拡大していく可能性もあるのではないだろうか。

 

図表 クラウドファンディングの利用の捉え方
図表 クラウドファンディングの利用の捉え方

【商品・サービス開発】の側面

*事業者はクラウドファンディングのプラットフォームを通じて、商品やサービスの改善に繋げることができる。

*ある課題解決のための事業アイデア・コンセプトそのものについて、プラットフォームを利用して収集し、具体化することも考えられる。(クラウドソーシング型:Quirky/CUUSOO/wemake)

【マーケティング・プロモーション】の側面

*クラウドファンディングのプラットフォームは、資金調達者と資金提供者との双方向コミュニケーションの場として成立しており、特に、資金提供者は当該プロジェクトのアーリーアダプター(初期採用者)、リードユーザーとなる可能性が高い。

*資金提供者はユーザー(消費者)目線で、製品やサービスに対して意見を伝えようとすることも少なくないため、テストマーケティングとしての役割も期待できる。

*資金提供者はユーザー(消費者)として、自身が保有するソーシャルメディアを通して情報を拡散する場合が多く、これが口コミ効果としてプロモーションとなり、ファンの拡大にも繋がっている。新規事業を立ち上げる際に、販促費の捻出にまで手が回らない事業者は少なくないため、クラウドファンディングが有するこうした側面は、事業者にとって極めて有益である。

 

■地方自治体におけるクラウドファンディングの利用・導入

今日、地方自治体においても、クラウドファンディングの仕組みを利用した資金調達や、域内団体の活動資金の確保の動きがみられる。ただし、寄付型や購入型、さらには大阪府の取り組みのように、1プロジェクトあたり数千万円の資金調達を目指すプラットフォームまで、その運営形態や目的は多様である。

また、「大衆の意思(投票)に基づく資金の供給」という仕組みは、これまでも「ふるさと納税」や「1%支援制度(千葉県市川市)」など行政施策にも用いられており、行政が関与するクラウドファンディングは、こうした既存の仕組みを、インターネットを活用し、より広範を対象に資金提供を呼びかけるとともに、域内の活動を広くPRする仕組みであるといえる。

図表 地方自治体におけるクラウドファンディングの利用例

資料)各団体の公表資料をもとに作成。

地方自治体がクラウドファンディングのプラットフォームの組成・運用に関与せず、既存の仲介事業者との連携を前提とする場合も、地方自治体がクラウドファンディングの仕組みを利用することで、産業振興や地域活性化等の政策目的に資する事業者等の活動を、地域を挙げて支援することができる。また、副次的な効果として、例えば、クラウドファンディングの募集対象要件に、域内あるいは域外、特定業種間の事業者連携を盛り込むことにより、事業者間の連携を促すこともでき、特定分野の活動に厚みを持たせる一助とすることもできるだろう。

図表 行政関与型のクラウドファンディングのイメージ
図表 行政関与型のクラウドファンディングのイメージ

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