地方創生への取り組みにおけるシティプロモーションの意義と可能性

2015/03/17
公共経営・地域政策部 主任研究員 大塚 敬

1.シティプロモーションが注目される背景

今後急速に進展すると見込まれる人口減少や高齢人口比率の上昇を背景として、地方自治体においては、消費市場規模の縮小や人材不足などによる将来の地域の経済力、活力低下が懸念されている。こうした状況に対し、地域の活力を維持・増進し持続的な発展を可能とするためには、都市間競争が厳しくなる中で、住民や企業、各種団体に「選ばれる地域」になることが必要との認識が高まっている。そして、こうした目標を達成するためには、産業の振興や生活環境の充実といった取り組みにより地域の魅力を高めるだけでなく、地域の魅力を「選ぶ」主体に適切に伝える努力が不可欠であると考え、シティプロモーションに注力する地方自治体が増えている。

2.シティプロモーションの近年の動向

■地域の特性に応じたシティプロモーションの方向性

一般的に、地方自治体がシティプロモーションに取り組む目的は以下のような事項に大別される。

表1 シティプロモーションの一般的な目的と取り組みの方向性

目的 取り組みの方向性
地域イメージの向上 ・地域の知名度、認知度の向上
・地域のブランド価値の向上
交流人口の増加 ・地域への来訪者の増加
・地域内で活動する人々や団体、事業者の増加
定住人口の増加 ・住民の地域への愛着の向上
・地域住民の定住志向の高まりと転出者の抑制
・転入者の増加

 

これらの目的は相互に密接に関係しており、地域イメージの向上は交流人口の増加、定住人口の増加に寄与する一方、交流人口、定住人口の増加が一層の地域イメージ向上に寄与するため、バランス良く目標を達成していくことで好循環により一層高い成果が期待できる。しかし、交流人口と定住人口では訴求すべき地域の魅力やアピールすべき対象が異なる部分があるため、地域特性とそれを踏まえた発展に向けた戦略に応じて、このいずれかに重点をおいて取り組まれるケースも多い。

■重点を置く目的の違いに応じた具体例

観光・交流産業の重視度の高い地域において、交流人口の増加に重点をおいて具体的事業を展開する事例が見られる。静岡市が平成18年12月に策定した「静岡市シティセールス基本方針」は、シティセールスの目標として『集客交流都市の実現』を掲げており、現在同市が開設しているHP『静岡市シティプロモーション』も、市内の観光情報を中心とした情報発信を行っている。

このような、交流人口の増加に重点を置いたシティプロモーションは、東京オリンピック・パラリンピックの開催を見据えて、今後取り組みが活発化すると見込まれる。

図1 「静岡市シティプロモーション」トップページ(抜粋)
図1 「静岡市シティプロモーション」トップページ(抜粋)
出典)静岡市「静岡市シティプロモーション」WEBサイト(http://www.shizuoka-citypromotion.jp/)

一方、大都市圏の都市など観光地としての地域特性があまり強くない地域において、定住人口の増加に重点をおいた事例が見られる。例えば、流山市が平成23年6月に策定した「流山市シティセールスプラン」は、プランの冒頭で『1.目標は定住人口の増加、そしてあこがれの街流山市に向けて』と明確に打ち出しており、知名度とイメージを向上させ、住みたい街として流山市をブランド化することで、最終的な目標である定住人口に繋げていく戦略が描かれており、さらにそのターゲットをDEWKS(共働き子育て世帯)に絞り込み、その特性を十分に考慮した戦略的なマーケティングを展開している。

図2 流山市のマーケティング活動の戦略
図2 流山市のマーケティング活動の戦略
出典)流山市資料

また、川崎市が現在策定中の(仮称)「川崎市シティプロモーション戦略プラン」は、平成27年3月時点の案によれば、目標として「市民の『川崎への愛着・誇り(シビックプライド)』の醸成」、「川崎の対外的な認知度やイメージの向上」の2点を掲げており、交流人口の増加ではなく、市民の「川崎市民」としてのアイデンティティ(地域への帰属意識)を強化することを重視し、対外的な認知度やイメージの向上が市民のアイデンティティを高め、それが市民活動等による地域の魅力向上や市民からの発信の活性化を促進し、さらにそれが認知度やイメージ向上に繋がる好循環を企図している。

図3 (仮称)川崎市シティプロモーション戦略プランの目標による好循環のイメージ
図3 (仮称)川崎市シティプロモーション戦略プランの目標による好循環のイメージ
出典)川崎市「(仮称)川崎市シティプロモーション戦略プラン(案)」

■PDCAの重要性

シティプロモーションの機動的な見直しを行い、有効性を高めるためには、PDCAサイクルを確立し、進行管理を確実に行うことが必要である。しかし、これまで先行してシティプロモーションの方針や計画を策定している団体の中には、取り組みの目標がイメージや認知度、愛着など客観的に把握しづらい側面を多く有していることもあり、PDCAに不可欠な目標指標が明示されていない団体も少なからずみられた。

これに対し、具体例にあげた流山市では、取り組みの直接的効果であるイベント来場者数や、転入者アンケートによるイベント、プロモーションの認知度、影響度の実績を取りまとめ公表しているとともに、最終的な目的である定住人口の増加について、年齢別人口動向の近隣団体との比較分析を行い、ターゲットとしたDEWKSの比率の向上に繋がっているかを検証し、資料として取りまとめている。また、川崎市では、(仮称)「川崎市シティプロモーション戦略プラン(案)」において、実績評価のための成果指標と目標値を定量的指標、定性的指標の両側面から設定し、これを活用したPDCAサイクルを確立することとしている。

こうした例に見られるように、これからは、シティプロモーションの実効性を高めるために、できる限り客観的な指標を用いて効果の検証を行い、機動的な見直しを行うことが重要である。

3.地方創生への取り組みにおけるシティプロモーションの可能性

人口減少問題の克服と地域の持続的な発展を目指して、平成27年11月に制定された「まち・ひと・しごと創生法」にもとづく地方創生に向けた取り組みが国を挙げて進められている。地方自治体においては、その具体的な取り組みを位置づける「地方版総合戦略」の策定への取り組みが始まっており、平成27年度以降、その戦略にそった施策・事業が進められることとなる。

総合戦略による取り組みは、地域産業の活力の維持・増進による魅力的な雇用の創出、豊かな住環境の整備、子どもを産み育てやすく生涯を通じて暮らしやすい生活関連サービスの充実などにより、出生数増と定住促進により人口減少に歯止めを掛け、地方の成長力を確保することを目的としている。この目的を達成するためには、こうした取り組みに加えて、その成果によって高まった地域の魅力を内外の人々や企業等の団体にアピールし、地域に目を向けてもらうことが必要である。

また、多岐にわたる取り組みを十分に行うためには、行政だけではなく、地域の人々の参加と協力を得ることが不可欠であり、その基礎として、人々の地域への理解と愛着、帰属意識を高めることが重要である。

以上のような観点から、シティプロモーションは地方創生への取り組みをより効果的に展開するための施策として有効であると考えられる。このため、前述の東京オリンピック・パラリンピック開催決定を契機とした動きも含め、今後、地方自治体のシティプロモーションへの取り組みは一層活発化すると見込まれる。

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