アメリカでの林業・木材産業のConferenceに参加して(後編)

2015/04/28
環境・エネルギー部 主任研究員 相川 高信

前編(注1)では、日本の木材市場の文脈づくりの発信の必要性と、木材の輸出戦略について、会議に参加しての感想も交えながら紹介した。後編では、アメリカ林業界で盛り上がりを見せているペレットを始めとしたバイオマスについてと、その背景に透けて見える森林管理の問題について、考えたことを述べたい。

■北米から東アジアへのペレット輸出について

筆者は朝のキーノートに続き、「北米でのペレット輸出の可能性」というセッションで、日本のペレット市場の見通しについてもプレゼンテーションを行った。ここでは、聴衆の関心を考慮して、筆者が日頃取り組んでいる、バイオマスによる地域の中小規模の熱供給についてではなく、大規模な石炭火力発電での混焼の可能性について紹介した。

すでに、熊崎氏が報告しているとおり(注2)、IEAのレポートでは、石炭火力発電所の容量を基礎データとして、日本と韓国が将来的には大量のペレットを輸入するようになると予測している(注3)。実際に、韓国ではペレットの輸入が急増しており、2014年の輸入量は28万tに達し、2020年には500万tにまで増加すると予測されている(注4)。他方、日本の輸入量は増加傾向にあるものの、2014年段階では10万t弱に留まっていた。しかし、原発が稼働を停止している間に、石炭火力発電について新設や既存発電所の増強が次々と計画されており、その中でバイオマスの混焼が増加すると予測される(注5)。実際に、環境NGOらがまとめた石炭火力発電の40の増設計画の内、10以上の計画においてバイオマスの利用が計画されている(注6)。その内、愛知県知多郡で大阪ガスの子会社が計画している110MWの石炭火力発電所は30%の割合で、「北米の製材工場から輸入したペレット」を混焼するとしている(注7)

一方、アメリカでは、2020年の再生可能エネルギー導入目標を満たすために、欧州諸国がペレット輸入量を増やしているために、欧州向けのペレット輸出量が急増している。ただし、アメリカは欧州へのペレット輸出を行っているが、その主な生産地域は森林資源と地理的な要因から、筆者が今回訪れたNorth West(西北部)ではなくSouth(南部)であり、North Westはアジアへの輸出市場に期待している。

今回のConferenceで筆者が得た有益な情報の一つに、アメリカにおけるペレット生産形態の地域差についての情報があった(注8)。そこでは、気候的・地形的な要因と、林業施業に対する規制の少なさから低コストでの丸太生産が可能であり、丸太から直接ペレットを製造する工場が少なからず存在する。他方、North Westでは丸太の生産コストがSouthに比べて高いことから、製材工場のおが屑でなければ採算が合わない、という調査報告がなされていた。ヨーロッパでは、丸太を直接の原料とするアメリカ(南部)産のペレットに対して、CO2削減などの観点から、疑義の声が絶えない。他方、日本や韓国などが輸入すると思われる、North Westやカナダ産のペレットは、製材工場のカスケード利用ということなるため、当面安心ということになるのだろうが、次に紹介するようにアメリカでも森林管理上の課題を抱えており、環境NGOやマスコミの監視は日本以上に厳しいため、レピュテーション・リスクはむしろ高く、アメリカ産だから安心というわけではないだろう。

■アメリカの森林管理が抱え込んだ新しい課題:木材利用技術の見極め

さて、会議が「Small Log Conference」と呼称しているのは、かつてのアメリカ北西部に広がっていた天然林から生産されてきた大径木(Old-growth)に比較しての表現である。すでに、資源の枯渇と稀少生物・生態系の保全のため、アメリカでは天然林(Old-growth)からの大径木生産は行わなくなっており、代わりに二次林(Second-growth)からの中小径木の生産に主体が移っている。しかし、気候変動の影響もあってか、このような森林において、害虫の大量発生や山火事の多発など森林生態系の劣化が著しくなり、森林管理上大きな課題が発生している。

このような状況において、山火事防止の観点から、林地残材や低質の丸太の有効利用の手段として、バイオマスに期待が集まっていることは、理解しておいた方がよい。実際にConferenceでも、「from Waste to Wisdom」と名付けられた、カリフォルニア州における大型の研究プロジェクトが紹介されていた。これまで現地で破砕・焼却されていた枝葉を、現地で燃料化するというプロジェクトだ(注9)。この背景には、このような林地残材等の森林に蓄積したバイオマスが山火事を引き起こす燃料となっており、山火事を起こしてしまうよりも、燃料として人為的に利用した方がCO2削減に繋がるという研究があるからだ(注10)

また、森林管理と木材利用の関係で、会場の誰もが驚いたのは会議の最後のセッションであった。実は最初、そこで何が議論されているのか、筆者は理解できなかった。実は、アリゾナ州の連邦有林の修復を行うための、アメリカの森林管理史上最大級のプロジェクト(注11)において、伐採される中小径木を買い取る長期契約を巡り、あるOSBボード工場が恣意的に排除されたという疑惑について議論されていたのだ。当日報告を行ったジャーナリストの記事によれば、OSBボード工場の経営者がフランス系の「よそ者」だったのに対して、連邦有林の担当者が馴染みのある地元の業者を選んだという(注12)

アメリカ連邦有林では、その管理・経営プロセスに、多様なステークホルダーが関与するプロセスが確保されているが、このような木材の利用先の決定プロセスの不透明さの問題が指摘されていた。ただし、筆者がより重要だと思ったのは、疑惑そのものよりも、木材利用の技術や市場の可能性を森林管理者が判断することの難しさである。実は、疑惑を深刻化させているのは、低質材からバイオ燃料を製造するという提案を行ない、木材買取の長期契約権を取得したGood Earth Powerという会社が、計画通りに工場を竣工しないことにある(注13)。ジャーナリストの調べでは、同社がホームページで実績として紹介しているアフリカやインドでのプラントは稼働実態がないと言う。

実は、このような事態は日本でも十分に起こりうることである。例えば、日本では2000年代にバイオマスの中小規模のコジェネレーション技術のために、各社がガス化発電の実証プラントを建設したが、商用化に結びついたものはほとんどない。また、2011年のFIT制度の施行以降は、5,000kWの発電がモデルとされ、完成度の高い蒸気タービンが用いられてきたが、2015年度から2000kW以下の買取区分が設けられたことから、ガス化発電の技術などがもてはやされるようになるだろう。加えて、トヨタ自動車が燃料電池自動車をリリースしたことで、バイオマスから水素を製造するような技術開発も盛んになるだろう。その際に、技術の精査は誰がどのように行うのだろうか?

筆者は技術開発自体を否定しているのではないのだが、実際に地域で事業を行う方々には、それが開発段階なのか、商用段階なのかを見極める必要があることを強調しておきたい。低成長時代に入った日本でも、木材需要の拡大は大きな課題であり、それに伴い木材利用の技術が高度化しつつある。したがって、アメリカの4RFIプロジェクトについて、日本でもある種の教訓を持って受け止めることが建設的であり、疑惑の真相については今後も注視していく必要がある。

■まとめ

以上、Small Log Conferenceに参加して考えたことをまとめてきた。強く感じたことは、このようなConference等の国際的なネットワークでの日本の情報の発信の重要性である。英語での日本の情報発信は少ないので、少なくとも関心は持ってもらえる。それに加えて、地球を何とか持続可能なもの転換させるための国際的なコミュニティの一員として、日本は何を課題として取り組んでいるのか、その背景は何か、そして他国にどのような貢献ができるのか、について語ることが重要だ。

今後もこのような機会があれば、積極的に参加していきたい。

(注1)http://www.murc.jp/thinktank/rc/column/search_now/sn150421
(注2)「木質ペレット市場の国際化と狙われる日本」熊崎実(「週刊 環境ビジネスオンライン」2013年11月25日号)
(注3)「Low cost, Long Distance Biomass Supply Chains (Revised in April 2014)」IEA Bioenergy Task40
http://www.bioenergytrade.org/downloads/t40-low-cost-long-distance-biomass-supply-chains%20v02042014.pdf(外部リンク)
(注4)http://www.biofuelmachines.com/wood-pellet-global-market-report-2014.html(外部リンク)
(注5)もちろん、温暖化対策の観点から、きわめて問題が多い。
(注6)「国内石炭火力発電所 建設・入札・廃止予定リスト」NPO法人気候ネットワーク調べ(2015年3月16日)
http://sekitan.jp/wp-content/uploads/2015/03/150316coalpowerplant_plansbidsshutdown.pdf(外部リンク)
(注7)大阪ガス(株)プレスリリース「名古屋発電所の隣接地における石炭火力発電所の新設について」
http://www.osakagas.co.jp/company/press/pr_2014/1209284_10899.html(外部リンク)
(注8)「Exporting Wood Pellets on the U.S. West Coast」Roy Anderson (The Beck Group)Small Log Conference 2015におけるプレゼンテーション。
(注9)http://magazine.humboldt.edu/fall14/from-waste-to-wisdom/(外部リンク)
(注10)http://phys.org/news/2015-03-wildfire-critical-carbon-payback-biomass-energy.html(外部リンク)
(注11)http://www.4fri.org/(外部リンク)
(注12)「Lost in the woods」Claudine LoMonaco, High Country News, Sept.1, 2014
(https://www.hcn.org/issues/46.15/lost-in-the-woods) (外部リンク)2015年4月24日取得
(注13)「Questions Abound for 4FRI Contractor」Forest Service Employees for Environmental Ethics記事
http://fsee.org/index.php/ground-truth/investigations/1004121)(外部リンク)2015年4月24日取得
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