国等による障害者就労施設等からの物品等の調達について

2016/05/25
共生社会室 副主任研究員 川澤 良子

サーチ・ナウ『女性活躍推進等に向けた公共調達の活用』(2014年10月7日)では、昨今、行政機関において、特定の政策目的を達成するために公共調達を活用する取組(例えば、女性活躍推進に積極的に取り組む企業を評価し公共調達における受注機会の増大を図ることで女性活躍を推進する等)が積極的に進められていると述べた。
 本稿では、このような行政機関における公共調達を活用したその他の取組である、国等による障害者就労施設、在宅就業障害者及び在宅就業支援団体(以下「障害者就労施設等」という。)からの物品等の調達を取り上げ、簡単な考察を行う。

1.国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の概要

国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律(平成25年4月1日施行、以下「障害者優先調達推進法」という。)は、国及び独立行政法人等が、物品及び役務(以下「物品等」という。)を調達する際、予算の適正な使用に留意しつつ、優先的に障害者就労施設等から物品等を調達するよう努めること、また、地方公共団体及び地方独立行政法人が、障害者就労施設等の受注機会の増大を図るための措置を講ずるよう努めること等を定めている。以下は、同法の主な内容である。

図表1 障害者優先調達推進法の主な内容

①調達の方針を策定・公表し、調達実績を公表すること
・国及び独立行政法人等については、厚生労働大臣が障害者就労施設等からの物品等の調達の推進に関する基本方針を策定・公表し、各省各庁の長等が基本方針に即して機関ごとの方針を策定・公表し、方針に沿った調達を実施、調達実績を公表することとされている。
・地方公共団体及び地方独立行政法人については、各機関の予算及び事務等を勘案して、調達方針を作成・公表し、方針に沿った調達を実施し、調達実績を公表することとされている(厚生労働大臣の基本方針に即して方針を策定することは求められていない)。
②公契約(注1)において障害者の就業を促進するための措置を講ずるよう努めること
・国及び独立行政法人等は、公契約の競争参加資格を定める際、障害者雇用促進法第43条第1項の規定に違反していないこと等に配慮して競争参加資格を設定する等、障害者の就業を促進するために必要な措置を講ずるよう努めることとされている。
・地方公共団体及び地方独立行政法人は、国及び独立行政法人等の措置に準じて必要な措置を講ずるよう努めることとされている
③障害者就労施設等が供給する物品等に関する情報を提供すること
・障害者就労施設等は、単独・相互に連携・共同して、供給する物品等の購入者等に対し、当該物品等に関する情報を提供するよう努めることとされている。また、当該物品等の質の向上及び供給の円滑化に努めることも求められている。

(資料)厚生労働省ホームページ

上記の障害者優先調達推進法の主な内容①~③の取組状況を見ると、“①調達の方針の策定・公表等”については、厚生労働省のホームページにおいて、市区町村の調達方針策定状況の調査結果や以下のような調達金額、各省庁における取組事例等が公表されている。
 はじめに、調達金額を見ると、平成26年度の実績全体は約151.3億円であり、このうち、国及び独立行政法人等は約14.6億円、地方公共団体及び地方独立行政法人は約136.7億円と、地方公共団体及び地方独立行政法人が実績全体の約90%を占めている。特に、市区町村(106.1億円)は、実績全体の約70%を占めており、最も高い割合である。

図表2 平成26年度国・独立行政法人等による障害者就労施設等からの物品等の調達実績

府省庁名 件数 契約額
合計 89,058 151.3億円
各府省庁 4,491 6.4億円
独立行政法人等 4,474 8.2億円
都道府県 18,368 25.9億円
市町村 57,974 106.1億円
地方独立行政法人 3,751 4.7億円

(資料)厚生労働省ホームページ

次に、各省庁における取組事例を見ると、厚生労働省ホームページでは以下の6事例が公表されており、いずれの事例も「発注金額」、「取組内容」、「取組のポイント」、「具体的な発注例」の項目で情報が整理されている。

図表3 各省庁における取組事例

省庁名 取組の概要
財務省 省内全体に速やかに障害者優先調達推進法を周知徹底したことによって生まれた好事例
国立国会図書館 特殊な専門性のある社会福祉法人に発注。DAISYの発注事例
防衛省 省庁の特性を活かし特定の品目を大量発注することで生まれた発注好事例
法務省 必要な調達品を全国各所で着実に障害者就労施設へ発注。地道な発注の積み重ねによる発注好事例
警察庁 企業への発注で障害者優先調達推進法の促進。重度障害者多数雇用事業所への発注による好事例
厚生労働省 障害者優先調達推進法を率先して実践。各省庁のモデルとなるように取り組んだ事例

(資料)厚生労働省ホームページ

次に、“②公契約における障害者の就業促進の措置”について見ると、厚生労働省ホームページでは、これら措置状況についての実績等を確認することができなかった。
 最後に、“③障害者就労施設等が供給する物品等に関する情報提供”については、都道府県ごとに、以下のような障害者就労施設等で提供可能な物品・役務の種類、連絡先等のリストを公表している(地方公共団体ごとに公表方法は異なり、統一的な様式で公表されている訳ではない)。

図表4 障害者就労施設等において提供可能な物品等(秋田県)(一部抜粋)

事業所名 製品(サービス)
の種類
連絡先〒 連絡先-住所 連絡先
-TEL
連絡先
-FAX
連絡先
-E-mail
指定障害者支援施設 小又の里 袋詰め・封入・シール貼り等

 

010-0132

 

秋田県秋田市上新城小又字落合85番地

 

018-870-2361

 

018-870-2372

 

omatanos
ato@sea.pl
ala.or.jp

木製家具(机、いす、ガーデニング用品等)
その他の木工製品(工芸品、玩具、生活雑貨、小物、グッズ等)

(資料)秋田県ホームページ

2.考察

上記の①~③の取組状況について、本稿が注目する点は、以下の3点である。

1.公表されている取組事例の中には「発注者の感想」等、障害者就労施設等を評価する内容を含むものもある。
 障害者優先調達推進法は“①調達の方針を策定・公表し、調達実績を公表すること”を求めており、上記のような調達金額や取組事例が紹介されているが、この取組事例の中には、以下の滋賀県のように、「発注の感想」といった障害者就労施設等を評価する内容を含むものもある。

図表5 取組事例(滋賀県)

発注所属 企業誘致推進室
発注先 社会福祉法人 いしずみ会 いしづみ
発注内容 近江金石会横断幕(布製)1枚 (縦60㎝×縦3,000㎝)
発注額 32,400円(税込)
発注日・納品日 平成27年7月8日・平成27年7月24日(納品期限:8月17日)
発注の感想等について 事前の打ち合わせでは、スケジュール確認や横断幕のフォントを3パターン提示いただく等、プラスアルファの提案も頂きました。また、期日の3週間前に納品いただき、発注から納品まで非常にスムーズに進めていただきました。
発注内容について把握いただき、横断幕の設置に必要な穴の位置や補強等、プラスアルファの提案いただきました。納品された横断幕の仕上がりも非常に丁寧で満足の行くものでした

(資料)滋賀県ホームページ

滋賀県で公表している取組事例は、「発注金額」や「発注日」等だけでなく、発注した際の障害者就労施設等の対応等、障害者就労施設等を評価している点で注目に値する。障害者優先調達推進法の附則では、障害者就労施設等の物品等の質の確保等に関する支援及び情報提供の在り方について、3年以内に検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずることが定められている。滋賀県で実施しているような障害者就労施設等の評価の仕組みを導入し、発注者から障害者就労施設等へ評価結果や感想をフィードバックすることで、障害者就労施設等における改善、更には質の確保・向上等につながるのではないかと考える。
 加えて、滋賀県のホームページで公表している「発注の感想」は、あくまで定性的な評価結果であるため、公共工事の経営事項審査のように、評価基準を設定し数値化する等、障害者就労施設等の物品等の評価情報を一層充実させていくことが重要だろう。

2.障害者就労施設等の情報として、物品等の単価や平均製造数等も公表されている。
 障害者優先調達推進法は“③障害者就労施設等が供給する物品等に関する情報提供”を求めており、上記のとおり、都道府県別の障害者就労施設等のリストでは、各施設が提供可能な物品・役務、各施設の連絡先等が掲載されている。
 この都道府県別の障害者就労施設等のリストのうち、福島県や東京都等では、以下のような各施設が提供する物品等の単価や平均製造数、納期、過年度受注実績等の多様な内容を公表している。

図表6 障害者就労施設等の一覧(東京都)
図表6 障害者就労施設等の一覧(東京都)

(資料)東京都ホームページ

このような充実した内容を掲載している地方公共団体は一部に留まっており、全ての障害者就労施設等で同じく充実した情報を掲載することが必要と考える。
 また、物品・役務の内容や施設の場所、平均単価や納期等、発注の際に検討事項となる項目で障害者就労施設等を検索できるよう、ポータルサイトを創設することも有用である。例えば、現在、創設10年未満の新規中小企業者の検索を可能とする「ここから調達サイト」が運営されているが、障害者就労施設等の提供する物品等についても、このような検索機能を有すること、さらには、そうしたポータルサイトを中小企業者、障害者就労施設等、属性に応じて横断的に検索できる統合サイトへと発展させていくことが重要である。

3.公共調達を活用した効果は示されていない。
 上記のとおり、厚生労働省ホームページ等で、発注を促進するための事例や障害者就労施設等に関わる情報等は公表されているが、これに加えて、「公共調達を活用した効果の検証(賃金や雇用の増加、障害者就労施設で就労する障害者、在宅就業障害者等の自立状況等)」も重要である。
 障害者優先調達推進法では、調達実績の公表等を求めており、効果検証を実施することまでは求めていないが、サーチ・ナウ『公共調達を活用した取組の有効性の検証』(2015年1月9日)でも述べたとおり、特定の政策目的を達成するためには、公共調達以外の様々な政策手段(補助金等)が存在し、そのような中で公共調達を活用することの有効性、妥当性を明確にすることが必要である。

【参考文献】
厚生労働省ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000052423.html
秋田県ホームページ
http://www.pref.akita.lg.jp/www/contents/1369973068785/index.html
東京都ホームページ
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shougai/shougai_shisaku/sokusin/buppin_ekimulist.html
滋賀県ホームページ
http://www.pref.shiga.lg.jp/e/shogai/yuusenchoutatsu/files/zireisyuu.pdf
川澤良子(2015年1月9日)サーチ・ナウ「公共調達を活用した取組の有効性の検証
川澤良子(2014年10月7日)サーチ・ナウ「女性活躍推進等に向けた公共調達の活用

(注1)公契約とは、「国又は独立行政法人等を当事者の一方とする契約で国又は独立行政法人等以外の者のする工事の完成若しくは作業その他の役務の給付又は物品の納入に対し国又は独立行政法人等が対価の支払をすべきもの」を意味する(障害者優先調達推進法第10条)。
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