ポストM9.0社会を支える、絆の見える化
全文紹介

2011/10 (2011 Vol.4)
研究開発部(名古屋) 副主任研究員 岩田 賢
研究開発部(名古屋) 部長 永柳 宏

 東北地方太平洋沖地震は、地震被害のみならず甚大な津波災害、さらには原子力災害等を複合的に含む東日本大震災を引き起こした。大震災で新たに顕在化した被害様相のひとつが、市町村職員・庁舎への壊滅的なダメージによる行政機能の喪失である。
 本稿では、過去の震災を含む行政被災と広域応援の実状を整理し、これまでさまざまな行政組織で広域応援体制が整備され、過去の地震災害において役割を果たしてきた経緯と、自治体間での応援協定が広がりつつある現状を把握した。一方、「想定外」の広域巨大複合災害に対しては、被害規模という量的な側面からも、応急対策事務や被災者支援等、迅速性や確実性を担保する制度面からも、これまでのような支援体制では十分ではないという課題が明らかとなった。
 そこで、自治体連携の強化方策について先進的な事例を参考とし、法制面改正をともなう国の対策見直しの動向も合わせ見ながら検討を行った。その結果、広域連携の強化には、国―県―市町村の「垂直型の応援体制」構築と、自治体間の相互連携による「水平型の応援体制」充実の2軸があるなかで、垂直型・水平型双方の長所・短所を踏まえバランスがとれた制度設計が望ましいことを示した。また、市町村の立場から、自治体連携の相互支援に資する取り組みを4つの段階に即してとりまとめた。
 すなわち、1.平常時には、①応援内容・目的の明確化、②共同での防災研修・事前訓練、③費用負担の明確化と④多様な主体の重層的な交流、2.発災後の初動期には、迅速な物資支援と顔の見える体制確保、3.短期支援では、業務に精通した職員派遣とチーム制による応援人数の確保、4.中期支援における専門職員の応援体制や避難先を想定した平時からの地域交流等の諸方策について、その意義と有効性をとりまとめた。
 歴史、文化、風土を含む地域特性の共通性と補完性を、自治体間で有形無形に存在する「絆」と捉え、例えば災害時相互応援協定によって「絆の見える化」が実現し、来る広域巨大地震からの「減災」につながることを願うとともに、また当社がその取り組みの一助となる機会が得られれば幸甚である。

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