エネルギー自治と経済・産業構造ビジョン
全文紹介

2012/07 (2012 Vol.3)
京都大学大学院経済学研究科 教授 諸富 徹

 本稿は、ドイツを事例に、先進国経済がエネルギー自治を可能にする経済・産業構造に切り替わりつつあることを確認し、地域レベルで経済・産業構造転換を実践するには何が必要かを論じる。
 まずドイツを事例にとって、環境エネルギー産業の伸張と雇用増大をともなって産業構造の転換が起きつつあることを確認する。また、ドイツではかつて環境政策の雇用インパクトに関する激しい論争が繰り広げられたが、その過程で、環境政策が雇用を奪うという論拠に批判が加えられ、それはむしろ新産業と雇用を創出することが定量的な分析で明らかにされた。
 その中から、環境政策手段を単に環境保全目的だけでなく、経済・産業構造のグリーン化のための手段として捉える見方が出てきた。これが、現在のグリーン・エコノミー論やグリーン・イノベーション論の嚆矢である。
 ドイツではこれらの議論に立脚しつつ、フライブルク市のように、地域レベルで環境産業の戦略的育成を実践する都市が現れてきた。日本でも、飯田市がほぼ同じような方向性で着実に歩みを始めつつある。飯田市のこれまでの経験から分かったのは、発電設備等のハード面よりもむしろ、人材、組織、ファイナンス等のソフト面が決定的に重要だということである。
 つまり、地域における「人的資本」と「社会関係資本」の蓄積が再エネ発電事業の鍵となる。さらに、資金調達の観点からみても、自然資本を価値化できる人的資本と社会関係資本の集積に担保価値を見出していく仕組みの開発が必要となる。つまり、エネルギー自治の内実をこのようにして形づくっていくことが重要なのである。

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