国土の自然資本の評価に基づく社会的な意思決定の推進に向けて
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2014/02 (2014 Vol.1)
研究開発第2部(大阪) 副主任研究員
徳島大学環境防災研究センター 客員准教授
西田 貴明

一昨年以降、日本でも経済学の資本の概念を自然に当てはめた自然資本(natural capital)が、政策やビジネスの文脈において登場しつつあり、さまざまな分野で自然資本の定量的な評価と、これに基づく意思決定が求められつつある。実際、自然資本の評価の議論は、自然資本というタームを用いられていなかったが、環境保全をはじめ国土管理、農林分野において、自然が保持している機能を評価するという点で、古くから行われている。1992年の地球サミットでは「環境・経済統合勘定」が採択され、2005年の「ミレニアムエコシステム評価」では、自然資本のフローを生態系サービスとして整理し、2012年には「EU2020年生物多様性戦略」により自然資本の国家会計への算入が推奨されており、長い時間をかけて欧州を中心に議論が進められてきた。しかし、日本でも、自然資本をとらえる動きがなかったわけではない。2001年に日本学術会議による「森林・農地の多面的機能の評価」が発表されて以後、森林による防災機能、農地による水源涵養等、自然の恵みに対する理解が進み、農林施策や企業のCSR活動等、定量的な評価に基づいた自然資本の維持管理の取り組みが始まっている。この多面的機能の評価に基づいた社会の意思決定の動きは、欧州の議論とは異なる点も多いが、経済的価値の評価により国土の維持管理を実際的に進めた点については意義深い。このような日本型の自然資本の評価に基づいた社会の意思決定の動きは、欧米中心で議論されてきた自然資本評価に対して新しい視座を与え、また、世界各地の自然資本の管理に対する資源動員を促すための方策を検討するにあたり重要なヒントになると期待される。

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