~後継者難時代に問う~ MBOは事業承継の有力な選択肢になり得るか?
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2016/05 (2016 Vol.2)
コンサルティング・国際事業本部 財務アドバイザリーサービス室 チーフコンサルタント 黒田 裕司
コンサルティング・国際事業本部 財務アドバイザリーサービス室 コンサルタント 廣田 智久
コンサルティング・国際事業本部 財務アドバイザリーサービス室 アソシエイト 安村 啓佑

オーナー企業の事業承継における最大のポイントは、「誰に企業を引き継ぐのか」である。かつては事業の承継といえば、ほとんどが近しい親族への承継であったが、近年では親族に後継者が見つからないという企業も少なくない。親族に後継者がいない場合、取るべき手段は主に3つある。ひとつは外部第三者への売却(M&A)、もうひとつは役員等の社内関係者への売却(MBO)または贈与であり、いずれも採りえなければ廃業という最後の手段に向かわざるを得なくなる。

後継者不在のオーナー企業のM&Aは着実に増えており、これが有効な選択肢のひとつであることは明らかだろう。他方、事業承継型のMBOも、徐々に手法としての広がりを見せつつあるが、一般的な認知度は低く、また成功には多くの前提条件を満たす必要もある。事業承継型MBOは、財務レバレッジを活用して少ない自己資金で株式の取得が可能、という大きなメリットがあるが、そのスキーム故のリスクが避けられない手法である。したがって、リスクを負ってもなお挑戦したいという後継経営者の強い意思・情熱に加え、多様な資金調達手法やそのバランス等について、専門家を交えた慎重な検討が不可欠となる。また、資金調達手法に関連し、単にどこからどんな条件で資金を調達するのか、ということに留まらず、PEファンド等の活用により、資金調達と同時にリスク分散と経営基盤の強化を図ったり、従業員持株会等の活用により、調達資金を圧縮しつつ従業員の意欲を引き出したり、ということも重要な検討課題である。

そしてまた、視点を変えると、事業承継型MBOの応用編として、後継経営者が単独で株式を取得するのではなく、役員持株会や従業員持株会による一部株式の取得を組み合わせた手法や、分散した株式を集約して経営権を強化したうえで親族等への事業承継を行う株式集約型MBO等、さまざまなスキームが考案され、実際に実行に移されている。

このようにみていくと、MBOは事業承継の有力な選択肢となりうるし、すでになりつつある、といってもよい。ただし、残念ながら、誰もが採用可能な、汎用性の高い手法ではないこともまた明らかである。MBOという手法が内包するリスクを十分に認識したうえで、後継者の強い意思と熱い情熱により成立の前提条件を着実にクリアし、専門家を交えた慎重な検討によるしっかりとしたプランニング、成功にはそれらすべてが必要になるといえるだろう。

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