自然資本という新しい概念が、今後、わが国の社会経済活動の行動規範として定 着していくには一定の時間を要するであろう。また、その推進主体や具体的な推進 方策についても多くの試行錯誤を要するものと思われる。
現在、いわゆる地球環境問題については、省エネルギー分野やリサイクル分野等、 すでにビジネスとして定着している領域が確立されている。そしてこれにとどまら ず、企業経営に環境CSRあるいは環境会計の考えが普及し、排出権取引といった ビジネスモデルも講じられる等、重要な価値観として十分に認識される。
しかし、高度経済成長期の公害の経験を経て、地球レベルの地球環境問題として認 識されてから、われわれの認識や社会経済活動に浸透するまでにも多くの努力と試行 錯誤があった。地球環境問題が定着してきたと感じられるのは、最近の状況である。
本稿では、地球環境問題に対する自治体または業界団体の取り組みを例に挙げ、 地域における地球環境問題に対する取り組みやそれらの取り組みをマネジメントす る新しい動向について俯瞰する。
地方自治体では、市民セクターや産業セクターの意欲ある自発的な取り組みをサ ポートしていこうという考えが広がり、市民セクターや産業セクターにおいても自 らが環境に対する価値を感じ、国や行政支援に過度に依存することなく、取り組み を進めていこうという動きが見て取れ、環境問題が重要な価値観として定着しつつ あることを垣間見ることができる。
自然資本の概念が今後、定着し、普遍的な行動規範として成熟していく過程で、地域での自発的な取り組み にまで浸透していく必要があるとともに、自然資本概念の普及推進に向けては裾野の広い分野で担い手を養成 していく必要がある。
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