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対米輸出車への追加関税

2018/12/20
五十嵐 敬喜

わが国は米国に年間170万台以上輸出している乗用車に、トランプ大統領が25%の追加関税を課すと言い出すことを恐れている。数だけで言えば、わが国が輸入している米国車は年間2万台程度だから、輸出入の台数に極端な差があることは確かだ。とはいえ、それを理由に大幅な関税がかかるようなら、自動車産業への依存度が高いわが国経済にとっては悪夢だろう。

しかし、むしろ問題だと思われるのは、追加関税を避けたいばかりに、わが国が輸出台数の自主規制に動いたりすることだ。そちらの方が日本経済に及ぼす悪影響はよほど大きいと思われるからだ。

単純な数値例で考えてみよう。1ドル=100円の相場の下で、1台100万円の自動車を米国に輸出しているとする。米国での販売価格は1万ドルだ。25%の関税が乗ると販売価格は1万2500ドルとなり、それでは売れなくなると恐れているわけだ。

しかしその場合、日本メーカーは輸出価格を引き下げるだろう。輸出価格を8000ドルにすれば、25%の関税を乗せても1万ドルだから、売れ行きは変わらない。もちろん円での受取金額は80万円に激減するが、為替相場が1ドル=125円になれば、受取金額は100万円を確保できる。追加関税が課されれば、為替市場では大幅な円安が起こるに違いない。その円安が追加関税の痛みを和らげてくれることになるわけだ。

これに対して、輸出台数を自主規制すれば、減らした分だけ国内の生産が減少する。仕入れが減り、雇用が減り、設備投資が減る。また規制は自動車部品にも及ぶだろう。景気は数量だ。売り上げや収益の金額が企業にとって極めて重要であるのは確かだが、マクロ経済を左右するのは、あくまで生産の「数量」であることを忘れてはならない。

(2018年11月15日日本経済新聞・夕刊 『十字路』」より転載)

調査部
研究理事
五十嵐 敬喜

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