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平成の30年の円レート

2019/03/14
五十嵐 敬喜

為替レートが1ドル=100円、ハンバーガー1個が日本で100円、米国で1ドルという状況から、米国のハンバーガーが値上がりしたらどうか。為替レートがそのままだと、100円では米国のハンバーガーが買えなくなる。この変化を「実質」的に円安・ドル高になったと言う。我々が普段目にする為替レートは「名目」値だ。他方、2国間に物価上昇率の差があると、上昇率が小さい国の通貨は大きい国の通貨に対して「実質」値で弱くなるのだ。

一方、円と様々な海外通貨との為替レートを総合した、円対「海外通貨全体」との為替レートが円の実効レートだ。その中で日本の物価上昇率が海外の上昇率よりも低ければ、円の「実質」実効レートも下落することになる。

ほぼ平成に重なる1990年初から昨年末までの期間で、円の実効レートは、名目で59%円高になる一方、実質では逆に25%円安になった。これは、この間に海外の物価が年平均3.1%上昇(通算2.39倍)する一方、日本では同0.4%(通算1.13倍)の上昇に止まったからだ。この差が名目と実質の大きな乖離(かいり)を生んだわけだ。しかも海外の所得水準は物価以上に上がったはずだから、日本製品に対する海外の人たちの購買力は年々高まり続けてきたことになる。

輸出価格競争力の観点でより重要なのは、「実質」レートの方だ。残念なことに日本はその大幅な下落を生かせていない。同じ期間に世界の輸出数量が4.5倍(年率5.5%)に増える一方、日本の増加は2.5倍(同3.3%)止まりだった。

要因は複数あるが絶対的競争力の低下は否めない。円高回避にきゅうきゅうとしがちだが、実は大幅な円安が進んでいながら成果につながっていない現実を直視すべきだ。

(2019年2月27日日本経済新聞・夕刊 『十字路』より転載)

調査部
研究理事
五十嵐 敬喜

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